第44話 お代官ごっこと告白

※月見里にはリビングで待ってて貰い、夢月は穂寿美を部屋へ連れて行き浴衣から着替えさせようとしていた。


「そ~れ~。」


 帯をぐるぐると回されて、時代劇の町娘のようにくるくると回る。


「あ~れ~。」


 妹はその姉に付き合う形で声をあえる。


「よいではないか、よいではないか。」


「あ~れ~。そんなお代官さま~。」

 

 帯が全て開け、浴衣の隙間から穂寿美の身体が露わになった。


「って、本当にナニモミニツケテナイノカヨ。」


「佐祐理がその方が盛り上がるからって。」


「いやいや、下着くらい身に付けなさいよ。」


「サラシは巻いてる……よ・」

 

「えろいな。くっそえろいな妹よ。サラシ巻かなくても崩れないだろうけどさ。」


「それは……お姉ちゃんもでしょ。」


「うっさいわっ。」 


 

 コンコンッと二人の部屋にノックが響く。


 通常であれば、返事があった後に声が響くか入室をしてくるものだ。


 しかし、焦っていたのか、ノックをした後返事を待たず、要件を伝えながら入ってくる。


「トイレ貸し……。」


「いやん。まいっちんぐ♪」


 そう言ったのは、まだ手に帯を持つ姉・夢月。


「……これでおあいこって事で?」


「し、しつれいしましたー。」



※※※




「義弟君よ。妹の裸は高いぞ。」


「いや、全部は見えてませんし。」


 そうさ。肝心なところはちょうど浴衣の生地で見えていない。


 上はサラシだったし、下は生地がちょうど隠していた。


 そりゃ、臍は見えたけど……


「全部とか一部の問題ではないのだよ、義弟君。」


「というか、まだ義弟と呼ぶのは早いのでは?」


 とりあえず、扉越しにトイレ借りる胸は説明し、どうにか洪水の危機は去った。


 そして、今は別の危機が訪れている。


 四月一日さんは独りであのまま部屋で着替えているため、この場にはいない。


「まぁ、海の時に義弟君のを見たって言うし?イーブンって事にしてあげよう。」


 例の話、誰にどこまで話してるんだよ。


「これで裸の付き合いもクリアって事で……」


「何をどうクリアしてるって言うんですか。」


「義弟君。ウチの妹のナニが嫌なのかね。親バカならぬ姉バカかも知れないけど、穂寿美は良い女だと思うぞ。ちょっと頭はヲタク脳かも知れないけど。」


 そのちょっとが異常なんだけどな……


 おせっせしないで子供が出来ない事くらい中学生でも知ってるというのに。


「いや、可愛いっすよ?学業もトップクラスだし、委員会も真面目だし……」


「じゃぁ何が不満なのさ。」


 テーブルの反対側から乗り出すように夢月さんが迫ってくる。


 普段着だからちょっと違うけど、これでもこの人、俺の推しのぷちめろんさんなんだよな。


 結構複雑だ……


「一年ずっと隣の席だったんだから、そろそろ子供が出来ても良いよね?なんて言われて、そうですねってなると思います?」


「ならんわな。」


「でしょう?」


「愚昧のアプローチの失敗か……」


「まぁ、インパクトは残してますけどね。」


「それで、2年になってから色々イベントが起こりまくりってわけね。」


「まぁ、そうですね。」


 実際最初から嫌だとまでは思ってない。


 雅の事があるから、一過性のものとか、後でうっそぴょ~んみたいなのとか、そういうのがあるんじゃないかとかなり身構えていただけで。


「本当に異性に対する好き嫌いの好意なのかなって……」


 身構えてしまうんだよ。また俺の勘違いとか自惚れなんじゃないかって。


 だから、今日思い切って俺の過去を話したわけなんだけど。


「そういうのは穂寿美って下手そうだねぇ、でも嘘付ける子でもないからねぇ。」


「それじゃぁ……私にしてみる?夢月としての私はともかく、ぷちめろんの私は推しなんでしょう?」


 さらにグイッと近づいてくる。うん、圧が凄い。近い近い、吐息かかるよお姉さん。



「ダメーッ。月見里君は私のッ。月見里君の事が好きなのは私ッ。お姉ちゃんには渡しませんッ!」


 突然リビングの扉が開くと、四月一日さんが勢い良く現れ、急な告白が始まった。


 ついでの告白にしか聞こえないんだけど……聞き流した方が良いのかな。


「そんな中途半端な告白じゃ響かないわよぉ。」


「娘が遠くへ行ってしまうぅ!」


 あれ?何時の間にか両親がリビングに?



「ど、どこから湧いて出てきたんですかっ!」

 

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