第55話

「あの、早乙女さん、明日暇ですか?」


 いつもなら恥ずかしくなって逸らしてしまうのだが、笑っている早乙女さんをもっと見ていたいという気持ちが視線を固定させた。


 「大きな仕事はもう終わったし、あとはいつでも好きな時に出来るから時間は空けれるけど、なんで?」


 つい口から出たデートの誘い。特にどこへ行こうとも考えておらず、どうしようと考えていれば思い出す、朝のニュース。


 「柴犬カフェ、行きませんか?朝ニュースでやってて」


 「なにそれ、行くよね絶対」


 動物が好きな早乙女さんなら食いつかないわけがないと思ったのだが、予想以上の食いつきに笑いが込み上げる。


 注文した果実酒が届き、柴犬カフェをSNSで検索しながら飲む。一緒に一つの画面を見ながら、投稿されている内容にはしゃぐ私たちを、大将が優しく見つめていた。


 「もうこんな時間。明日もあるし、今日は帰ろうか」


 「そうですね。朝起きれなかったら起こしに来てください」


 「俺も起きれる自信ない」

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