第47話

ずっと腕にしがみついたままの桃。


 正直、コンビニまでの数十分、とても歩きづらかった。


 「寒くなってきたから、おでん食べたくなった」


 「ハーゲンダッツが良い」


 「真逆」



 桃が落ち込んでいる原因は、大体予想がつく。


 きっと、彼氏と何かあったに違いない。


 店内に入ると、一目散で私はおでんコーナー、桃はアイスコーナーへと足を向けた。


 肌寒いとおでんが恋しくなるのは毎年のこと。


 つゆたっぷりの器に、大根とこんにゃく、厚揚げを入れていく。


 ちらっとアイスコーナーの方に目を向けてみれば、桃はカゴを片手にハーゲンダッツを放り込んでいた。


 「…お金、足りるかな」


 突然の金銭的な不安に駆られていると、追いかけてきたのか、店内に入ってきた彰。


 コーヒーを手に取り、一緒に会計するわと言ってくれた瞬間、彰が神様に見えた。


 「あっくん、歩くの早いね」


 「車で来た」


 桃は、彰が買ってれると分かると、更に遠慮が無くなり一番くじの券までレジに持ち込む始末。


 「待って彰、お昼お酒飲んでたよね?」


 私が気になるのは、お酒を飲んだのに車で来たのか?ということ。


 しかし彰は不敵に笑い車の鍵をクルクルと指で回してこう言った。


 「気がつかなかったか。俺、ノンアルしか飲んでない」


 「え、やっぱり神なの?」


 「A賞出た」


 桃が呑気に景品を撮りに行き、私と彰は先に車に行く。


 なんでも彰は、宴会化するであろう家から私と桃を連れ出してドライブに行こうと思い、ずっとノンアルで母たちを相手していたらしい。


 そのために彰父の車を借りたのだと、得意気に話していたが、桃と私は買ったものに夢中。


 私と一緒に飲んでいたのもノンアルだったらしいが、本当に全く気がつかなかった。


 さり気なく先のことまで考えて気を配る所は、昔から変わらない。


 それが自然に出来てしまうのだから、凄いと思う。

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