第45話

「雪、今度これ出してみない?」


 「何これ」


 「出版社で働いてる知り合いから教えてもらった。まだ未公開らしいんだけど、このコンテスト、大賞取れば間違いなくデビュー出来るらしいんだ」


 彰が見せてくれたのは、小説のコンテストの詳細。


 私の夢をいつも応援してくれる、大切な幼馴染。


 だけど今は、


 「ありがたいんだけど、もう書く気は無くて」


 その優しささえ、毒だった。


 『才能ないんじゃない?』


 昔のトラウマが蓋を開けそうになるのを抑え、やんわりと断る。


 「そっか…。まあ、締め切りまだ先だし、気が向いたら連絡してよ。ちゃんと詳細送るから」


 「ありがとう」


 気まずくなるのが嫌で、彰の持ってきた缶ビールに手を伸ばす。


 「お、飲むか?」


 「勝負する?」


 彰も同じように手に取り、プシューという幸せ満載の音を二つ響かせて軽く乾杯した。

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