第43話

最近仕事が忙しくて、外に出るのもめんどくさい。


 制作に夢中になると、時間を忘れてしまう。


 食べることも寝ることも、後回しが当たり前。


 やっと落ち着いて、外に出れば久しぶりの太陽に目が焼けそうになる。


 なるべく日陰を通るようにしようと思い、歩き出せば見つけた鳴無さん。


 隣には、いつもよりダルそうな妹を連れている。


 「どっか行くの?」


 話しかければ友人を迎えに行くという。


 去り際に何か失礼なことを言われた様な気がしたが、よく聞こえなかった。


 「なんで俺、嬉しいとか思ってるの?」


 会えたことが嬉しいだなんて、初めての感情。


 何故かその感情が今、働いている。


 戸惑いながら散歩ついでに寄ったスーパーで、らしくもない食材の調達をした。


 「作ってみようかな、オムライス」


 お米は野久保さんに炊き方を習おう。


 飲み物のコーナーでついでに買ったココア。


 案の定オムライスは失敗に終わってしまったが、気がつけば送っていた恥ずかしいメッセージに返信が来たことで、またもや嬉しいと感じる心。


 「なんか今日の俺、おかしい」



 知らない自分に、もしかして何かの病気なのかと不安になった日のことだった。

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