第37話

案の定二日酔いになった桃は、げっそりした顔で外に出る。


 「どっか行くの?」


 「早乙女さん、久しぶりですね。帰省してる友人に会いに行くところです」


 「あ、イケメン」


 まだ酔いが抜け切っていないのか、ヘラヘラと早乙女さんを見て喜ぶ桃を横目に見て、なんともいえない顔をした早乙女さん。


 顔を合わせるのは本当に久しぶりで、少し伸びた髪の毛の先がクルッとなっているのを見て、癖毛かな?と思ってしまう。


 眠たそうな目に、相変わらずのオーバーサイズの服。


 まるでバンパイアかと突っ込みたくなるほど、陽の光を眩しそうにして影に逃げようとしている。


 「早乙女さんはどこかにお出かけですか?」


 「散歩。家に篭りすぎたから」


 「なるほど。お気をつけて」


 不本意そうに歩き出す早乙女さんは、すれ違う前に手を振り「鳴無さんもね」と言葉をくれた。


 「陽気な部分を全て抜き取られた王子様みたいだね。顔面強いわ」


 外に出て少しマシになったのか、失礼な発言を連発する桃。


 時間を見ると約束の時間が迫っている。


 「吐かないでよね」


 「お姉ちゃん、運転下手だからな。吐いたらごめん」


 急いで乗り込んだ車で、桃がどうか吐きませんようにと願うのであった。

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