第35話
早乙女さんとのデートから数週間後、仕事が繁忙期を迎えたことにより目まぐるしい毎日が続いていた。
下着泥棒がまだ捕まらないことを謝る電話が警察から入ったが、あれ以来被害はない為特に気には留めていない。
忙しいのは早乙女さんも同じのようで、お隣の野久保さんが、ここ最近顔を見せないから食べているのか心配だと言っていた。
まるで離れて暮らす息子を心配するかのような言葉と表現に、「安心してください、この間大量のカップ麺のゴミを根神さんが朝出すのを見ました」と、心の中で返事した。
健康状態に少々問題はあるだろうが、飢餓状態ではないはずだと。
流石にカップ麺ばかり食べていますと告げ口をするのは気が引けたため、心の中で留める。
「お姉ちゃん、明日あっくん帰って来るじゃん」
「あれ?明日だったっけ」
「あっくん、お姉ちゃんにはちゃんと連絡入れたって言ってたよ?」
「本当だ。忙しすぎてメッセージ流れてた。今見た」
「え、かわいそう」
金曜日の仕事終わりということもあり、桃にアポなし訪問を仕掛けられた。
最早定番である。
話に出たのは、幼馴染が帰ってくるという内容で、そういえば前に来月帰ると連絡入っていたなと思い出し、数日前にも届いていたメッセージを今見ることに。
そこにはちゃんと帰る日程を綴られていて、気がつくのが遅くなったことを申し訳なく思う。
「仕方がない。休みだし、会いに行ってあげようか、私も一緒に」
「お土産目当てだよね、桃」
家族絡みの交流がある幼馴染の彰。
桃は実の兄のように慕い、母も息子のように可愛がる。
そんな彰の帰省は我が家にとっても嬉しいもので、明日はきっと彰一家と一緒に宴会だ。
「お姉ちゃんも本当は嬉しいくせに」
冷蔵庫にお酒のおかわりをとりに行く桃。
「まあ、久しぶりに会うからね」
私も私で、久しぶりに会える幼馴染に心が躍る。
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