第33話

オムライスを満足そうに食べた早乙女さんは、仕事をするからと、帰っていく。


 「今日は色々ありがとう。またね」


 軽く手を振る素振りをして玄関から出て行くのを見送れば、外で根神さんの声が聞こえた。


 時刻は21時近く。


 きっと何かアイデアが浮かんだのだろう。


 「書きたいものが書けるの、羨ましいな」


 私は昔、作家を夢見ていた。


 幼い頃に父と母が、私と桃を寝かしつけるときに聞かせてくれた、創作話。


 毎日の楽しみで、ワクワクしながら耳を傾けていたのがずっと忘れれず、いつからか物語を書く人になりたいという夢を持っていたのだ。


 だけれどその夢は、夢のまま終わってしまった。

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