第26話

母と妹が帰って静けさが戻ってきた。


 ずっと騒がしい環境に身を置いていたからなのか、一気に寂しいと感じてしまう。


 疲れた一日だった。


 ソファに傾れ込むと、休む間もなくチャイム音に呼ばれてしまう。


 ネットショッピングでもしたかなと思いながらドアを開ければ、早乙女さんと根神さんがドアの向こうにいた。


 「1人?急にごめんね」


 「いえ、もう母たちも帰ったので」


 顔の前で手を合わせながら、ごめんという素振りをする根神さんは、何やら私に話があるようで、家の中に通すことにしたのだが、


 「こっちに呼べば?流石に女性の一人暮らしの部屋に男2人で上がるのは心苦しいでしょ」


 という早乙女さんの発言により、初めて隣の部屋、早乙女さんの部屋に上がらせてもらえることに。


 「お邪魔します」


 「適当にくつろいでてよ。コーヒーでも淹れるから、根神さんが」


 「俺?」


 部屋の中は案外綺麗に纏まっていて、黒と白を基調としたシンプルな空間が広がっている。


 ソファに腰を掛けて、部屋の中を見渡していれば、コーヒーのいい匂いが運ばれてきた。


 「ありがとうございます」


 「ごめんね、招いた側なのに瑠威、仕事立て込んでてさ」


 「いえ、人気作家さんなんですよね。仕事する姿初めて見るので、新鮮です」


 私の返答にフッと笑った根神さんは、向かい側に腰を下ろすと本題に入った。


 「単刀直入なんだけど、瑠威とデートしてあげてくれない?」


 「…はい?」

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