第25話

桃が母に下着泥棒の一件を話したおかげで、週末我が家は大騒ぎ。


 突然尋ねてきた母は、私を見るや否やすごい剣幕で怪我はないかと聞いてきた。


 「下着盗まれただけだから。別に強盗に襲われたとかじゃないし」


 「泥棒は泥棒よ!しかも下着ですって?どこに潜んでるの変態!成敗してくれるわ!」


 「近所迷惑だから」


 昼まではあるが、迷惑レベルの大声を放つ母に、静まってくれとお願いする。


 一緒に来ていた桃は、刑事ドラマでも見たのか、壁に隠れて外の様子を伺う素振りを見せる。あんぱんと牛乳を片手に。


 「あんたに関しては楽しんでるでしょ」


 「し、静かに。安全の確認中です」


 まるでコメディードラマかとツッコミを入れたくなるほど、個々に暴走する母と妹。


 桃が勢いよくカーテンを閉めたことにより、一旦座って落ち着く。


 「…まあ、一回落ち着こうか、雪」


 「私は落ち着いてるから。落ち着いて、お母さん」


 母はどうしても警察に相談して欲しいと説得をしてくる。


 桃は早乙女さんのくれた防犯グッズを見つけて、こんなのがあるんだと物色していた。


 外は雨が降り始めたようで、心地の良い雨音が聞こえる。


 「雪、お願い。警察には相談しよう」


 「…分かった」


 母のこの顔には弱かった。


 心配と不安と悲しみの混じった、なんとも言えない切ない表情には。


 気がつけば母が警察に連絡を入れていて、数十分後に警察の人たちが現場検証に来た。


 早乙女さんの一件もごく最近のことで、きっとまた警察が来たことに他の住人たちは不安を抱いたことだろう。


 一通り事情徴収や検証を終えた警察の人を見送るときに、根神さんと一緒に帰ってくる早乙女さんと目が合った。


 お辞儀をして部屋に入っていく2人に、母と妹もお辞儀を返す。


 「…ボーイズラブ?」


 「待って、なんでそうなるの?」


 さっきまでの深刻な時間はなんだったのか、早乙女さんと根神さんを見た母は通常運転に戻っていたのであった。

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