第20話
「 おじゃまします 」
「 上がって上がって。適当に寛いでて 」
中に入れば、同じ間取りなのに全く違う空間が広がり不思議な気分になる。
皮のソファに腰掛け、トントンと言うリズムの良い食材を切る音に眠気が誘われ、ウトウトとしていると、旦那さんが帰って来たのか玄関が騒がしい。
「 おじゃまします…え 」
「 …え 」
ただいまと言う旦那さんの後に続いて入って来たのは、左隣の早乙女さんで、目が合うとお互いにびっくりして固まってしまった。
「 あら、会えたのね。瑠威君、たまに夕食に誘うのよ。自炊してないって言うから、栄養のあるもの食べて欲しくて 」
「 そうなんですか。早乙女さん、昨日は大変でしたね」
「 うん 」
相変わらず素っ気ない態度の早乙女さんは、着替えて来た旦那さんに呼ばれて晩酌を始めた。
「 鳴無さんもどう? 」
「 ビール飲める? 」
「 あ、はい。いただきます 」
まるで自宅かのように寛ぐ早乙女さんに呼ばれ、晩酌の仲間入りをさせてもらう。
料理を手伝った方がいいのでは無いかと思いながらも、料理は苦手だったと思い、足手纏いになるよりは静かに待とうと、注がれたビールを一気に飲み干す。
「 あ、飲める人なんだ 」
「 女の子なのにいい飲みっぷりだ!もう一杯! 」
「 いただきます! 」
飲めることに驚いたのか、早乙女さんが目を丸くし、旦那さんが嬉しそうに2杯目を注いでくれる。
あゝ、これは今日、潰れるな私。
そう覚悟をした2杯目のビールだった。
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