第19話

見事に下着だけが無い状態のベランダ。


 桃と2人、苦笑いを浮かべて震える。


 「 ねえ、引っ越せば? 」


「 まだ下着泥棒って決まったわけじゃ無いし、早すぎるって。猫かもしれないじゃん 」


「 どんな猫?下着だけ取って行く器用などすけべ猫、どこにいるの??? 」


 幸いにも、お風呂の遅かった桃の下着は浴室に干してあり、盗まれたのは私のだけ。


 着古してたし、また新しいのを買えばいいと思い開き直る。


 しかし、ベランダの外から見えないように、弊に隠れる高さの物干しに干していたにも関わらず盗られた事実。


 犯人はきっと、忍び込んで盗って行ったのだろう。


 その執着心、令和の変態仮面と呼ぼうか。


 「 警察呼べば?それで暫くは実家に帰って来た方がいいと思う 」


「 良いよ。たまたまでしょ、たまたま。大袈裟なんだよ、桃は 」


「 危ないって、女の一人暮らしっていうのが変なやつにバレたって事だよ?何かあったらどうするの? 」


「 私桃みたいに可愛く無いから大丈夫だよ 」


ヘラヘラ笑う私を、桃は心配そうに見る。


 何故か他人事のように思える出来事で、この一回だろうと思い、ベランダには2度と干さないからと説得して、桃は渋々帰って行った。


 「 鳴無さん?どうしたの? 」


「 あ、野久保さん。こんばんわ 」


見送った後、ボーッと外を眺めていると、隣の野久保さんが帰って来て声をかけて来た。


 下着を盗まれたかもしれないと言うことを話せば、1人は怖いでしょうと、夕食をご馳走してくれることになり、申し訳なく思いながら、ありがたくそのお言葉に甘えることにしたのだった。

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