第7話

「隣に越してきた鳴無雪です。よろしくお願いします」


 9時を過ぎたころ合いを見て、引っ越しの挨拶に回る。


 「丁寧にありがとうね。野久保です。夫と二人暮らしだから、いつでも頼ってきてね」


 「ありがとうございます」


 右隣の野久保さんは、老夫婦で住んでいるようで、人の良い奥さんが手土産を申し訳なさそうに受け取りながら綺麗な笑顔を浮かべた。


 「もう早乙女さんにはご挨拶した?」


 「早乙女さん?」


 「鳴無さんの左隣の子」


 「今から行こうかと思っていました」


 「そうなのね。早乙女さん、少し変わっているけど良い子だから、仲良くしてあげてね」


 「?はい」


 変わっていると聞き、どんな人なのか気になる。しかし、野久保さんにお辞儀をして次に向かうと、留守なのか返事がなかった。


 「また今度、挨拶しよう」


 また出向こうと思い自室へと戻れば、左側の壁から聞こえる大きな音。


 「…居たの?」


 それは不在だったお隣が家の中に居たということで、なんだか複雑な気持ちになったのだった。

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