第5話

「 挨拶、しときなさいね 」


 実家を出ると言うことで、寂しくナーバスな気持ちになっていたが忘れていた。そうだ、母はこう言う人だったと言うことを。


 「 いつ会ったの?お母さん 」


 「 荷物を運ぶ時に見たの。久しぶりに見たわ、あんなに整った顔の人 」


 「 お姉ちゃん、挨拶私も一緒に行こうか!? 」


何故かはしゃぐ母と桃。私はその様子をただじっと、じーっと呆れた目で見つめていた。


 「 イケメンだからって、私はどうでも良いから 」


「 お姉ちゃん、そのままじゃ一生結婚できないよ 」


 「 するつもりはないの 」


「 えー 」


「 えー 」


 何とも似ている2人。尖らせている口に、切り分けたお好み焼きを放り込めば、熱かったのか水を飲む桃と、同じ熱さなのに平然と咀嚼する母。騒がしい時間はあっという間に過ぎてしまい、帰るとそのまま車を乗り換えて実家へと帰って行く。


 寂しさが込み上げてくる中で、


 「 雪、頑張りすぎないのよ。一人だと余計に、頑張る性格だからあなたは。頻繁に帰っておいで。寂しい時は一緒にご飯食べよう 」


「 …!うん 」


 お見通しな母に、流石だと感じる。そう言い残し、桃の運転する車が見えなくなるまで、私は見送った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る