出会いは最悪の色をしていた

第4話

車を走らせて15分。食べログで見つけたお好み焼き屋さんに入ると、ふわっと広がる鉄板の上で焼ける食材たちの匂い。


 「 食欲そそるわ〜 」


妹の桃が雑に靴を脱ぎ、2段ある階段を登って、店員さんに何名でどの席が良いかを伝える。


「 ああ、もう 」


「 … 」


 母がため息をつきながら、桃の靴を持ち下駄箱へと入れる様子を、私はただ静かに見つめた。


 「 こっちこっち〜早く〜 」


相変わらずマイペースな桃に振り回されるように、店員さんに案内された席へと着く。


 「 どこで〜こ〜われ〜た〜の 」


 「「 oh〜フレンズ〜 」」



隣の座敷で食べているサラリーマンであろう男性達は、酔っているのか店内でかかるレベッカのフレンズを楽しそうに歌っていて、楽しそうだなとその様子を眺める私達家族。


 「 ご注文はお決まりですか? 」


店員さんが注文を取りに来て、それぞれが食べたいメニューと、ドリンクバーを頼む。


 届いたお好み焼きと焼きそばを鉄板の上で調理しながら、向かい側に座る母が口を開いた。


 「 雪、あのね… 」


 神妙な面持ち。一体何を言うのだろう。もしかして、寂しくなるような事だろうか。引っ越し初日の外食だ。きっと、何か言葉を選んでいるに違いない。


 その後の言葉を待つ事数秒。


 「 お隣さん、綺麗なお顔をした男の人だったわよ 」



「 …は? 」



「 え、いいなー!羨ましい! 」


 しかし、続いた言葉は何とも浮ついたもので呆気に取られてしまう。

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