第3話

秋の風が、心地良く吹き始める季節の変わり目。


 26歳にして初めの、一人暮らし。


 母と妹に手伝って貰い、今日からお世話になる部屋に、引っ越しの荷物を運んで行く。


 「 お姉ちゃんって、物持たないよね 」


部屋作りにこだわる人ならば、あっという間に物でいっぱいになりそうな1LDKの部屋。私の場合は、ベッドにテーブル、ラグに家電だけ。必要最低限のものしか持たない私の引っ越しは、短時間で終わりを迎えた。


 「 雪は物欲、無いからね 」


後はガス会社の人が来るのを待つだけ。

 

 母と妹は、大きなあくびをしたかと思うと、テレビをつけて寛ぎ始めている。


 手伝ってくれた二人に、後でご飯をご馳走しようと周辺の食べログを開く。


 「 晩ごはん、お好み焼きはどう? 」


「 良いね、久しぶりに誰が返すの上手か勝負しようか 」


「 私焼きそば頼むから棄権と言うことで 」


「 桃、あんたって子は 」


いつもの家族の会話。これが明日からは一人になるのかと思うと、少し、嫌、かなり寂しい。


 「 ありがとうね、お母さん、桃 」


テレビから視線を私に移した二人は、キョトンとした顔をしている。照れ臭くて今まで言えなかった言葉に、どうしたのだろうかと思っているに違いない。


 タイミング良く訪れたガス会社の人。


 簡単な手続きを終わらせ、早く行こうと二人を連れ出したのだった。

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