第24話 救出
はらはらと涙を流す妻の姿に、カッと脳髄が焼けた。
珠を得るためとはいえ、ここまでするか。
「に、義兄さんっ、待ってくださいって!」
一緒に来てくれた
しかし
「な、貴様、なにも───が、アアァァァァ!?」
泡を噛むような誰何に、
「……殺してやる」
血に塗れた剣を引きずり、逃げる男に追いすがる。
「よくも
許さない。許してなるものか。
中原の怒りを買うとか、儂は高貴なる身だとか男が叫ぶ。
そんなもの
剣を振りかぶる。男の絶望に染まった顔に目掛けてまっすぐに振り下ろさんと力を込めた。
「やめとけ、
真後ろから頭を小突かれる。
振り返ると、義妹の夫の伝手で求めた協力に答えてくれた、平原の単于の跡取りがいた。
「そいつを殺すと面倒だ。そんぐらいにしとけ」
「……俺の邪魔をするな」
「阿呆、優先順位を付けろって言ってんだよ」
ぎろりと睨むと、見事な槍の石突でもう一度頭を小突かれた。
「こっちは俺が処理しておいてやる。お前は嫁さんを優先しろ」
単于の跡取りが指さす先に、
血や涙に塗れた無残な姿に、頭が一気に冷える。
「
剣を握ったまま駆け寄る。手足の枷を叩き壊して自由にしてやり、そっと身体を起こさせた。
呼吸は浅いが、ちゃんと息をしている。ほっと安堵して
「
「……おそくなって、すまない」
こんなことになるならば、一人でも敵陣に乗り込めばよかった。
後悔と怒りを押し殺すように強く
ややあって、のろりと上がった
「泣くなって、
子供をあやすような手付きに、体の力が緩む。
「私が助けてくれと、思ったらお前が現れて。私、思ったんだよ」
汚れた
濡れた頬を何度も指で拭って
「
「
例えようもない愛おしさが
だから代わりに、唇を重ねて、ぼろぼろの体を強く抱きしめた。
腕の中の確かなぬくもりも逃すまいと、強く、強く。
そうして気が済むまで、ふたりは人目もはばからず口付けを交わし続けた。
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