幸福
異世界転生というのは案外、唐突に起こるのがテンプレみたいなものだろう。
実際、俺も唐突すぎて驚いてしまったが。顔には出してないぞ。出してないよな?まぁとにかく、俺は異世界転生したわけだ。嬉しいけども性別まで変わるのは聞いてなかったな〜
あぁ、前世の名前は「青馬 遥斗」しがない社会人であり、事故に巻き込まれて死んで、転生した人間だ。
今世の名前は、「レイン・グリーンストーン」性別は女性だった…
「グロリアス帝国」の五大公家の一つ、グリーンストーン公爵家の次女として生まれた。転生ガチャは大勝利ってな。そんな家の家族構成は父「カイル・グリーンストーン」、母「ミーナ・グリーンストーン」、長男「ロンド・グリーンストーン」、長女「アロマ・グリーンストーン」の四人に俺を含めた5人家族だな。
この世界、と言うより帝国は5が縁起のいい数字らしいし。
さて、この世界に生まれて、既に5年が経っている。今日から勉強が始まる。憂鬱さと楽しみがない混ぜになっているが、まぁ、楽しんだもの勝ちだろうから、先生はあまり怒らない人がいいな。モチベーションにも繋がるし。
◇◇◇
「う〜ん」
前世の知識、何一つとして使えない。転生してから知識チートなんてのは、両方の世界がちゃんと同じ計算式や記号を使うから成り立つのであって違う記号や式を使うなら、前世の知識は無駄となる。数学めんどい。
「お嬢様はやはり物覚えがいいですね。羨ましい限りです」
「ん〜そうかな?」
「えぇ、私は物覚えが悪く勉強も魔法もなかなか進まず、かなりの時間がかかっていたのですよ。それをお嬢様は未だ5歳ですが、既に……」
「既に?」
「いえ、なんでもありません。気にしなくていいですよ」
「?」
こんなやり取りがあったりしたけども、いくら物覚えがよくとも、嫌なものは嫌なんだよね。まぁ、やるけどさ。諺にも「後悔先に立たず」とも言うし今のうちにできることはやっておかないと。
まずは勉強と読書!知識は無いより何かあったほうがマシだからね。あと、礼儀作法もしっかりと覚えないと。この世界の作法は結構大雑把な感じだから覚えやすくて助かるよ。
さぁて、家の書庫の本全部読む勢いでいくぞ!
▽▽▽
side リーン先生
私の名前は、「リーン」といいます。
かのグリーンストーン公爵家のレインお嬢様の家庭教師として公爵家の屋敷に住まわせてもらっています。最初、この仕事を受けたときは、依頼主の欄をよく見てなくて大変でしたね。貴族だとしか見てなかったですし、まさか住み込みだったとは………
しかし、そんな事どうでもいい程にお嬢様は可愛らしいです。あの銀の髪も瞳も声も息もその存在全てがなんと愛おしいのか、最高です。役得といっていいでしょう。
そんなお嬢様ですが、とても才能に溢れ、まさしく才女と呼ぶに相応しいでしょう。私が5歳の頃など勉強から逃げて遊び呆けていましたから。そんな私と比べると遥かに素晴らしい方です。将来が楽しみですね。
と、まぁ才能溢れるお嬢様の家庭教師として私は、やる気がもう無限に出てきまして、お嬢様に10歳から入学する貴族学校の5年分の内容を全て教え、なんなら専門的な魔法・錬金術・戦闘技術を叩き込んでいます。
私は元ですが、かなり高位の探索者でしたので。家から追い出される形で一人探索者となりましたが、巡り巡ってお嬢様の家庭教師になれて幸せです。
そんなお嬢様は、現在の自分の知識量や戦闘技術を客観視できていませんでした。進みすぎた弊害ですね。
「先生?大丈夫ですか」
「あ、えぇ大丈夫ですよ。少々考え事をしていただけですので」
「勉強についてでしょうか?」
「はい。そろそろ机に向かう勉強ではなく、実践してみましょう」
「!…はい!」
あぁ可愛い。
とにかく、次の方針は決まりました。私は家庭教師として、お嬢様に実践を教えるために屋敷の外に連れて行くことにしました。
▽▽▽
side レイン
先生が何処か上の空のようだ。なにかあったのかな?
「先生?大丈夫ですか」
もし、先生に何かあったら心配だ。まだ色々教えてもらってないことが多いのに。とにかく聞いておこう。
「あ、えぇ大丈夫ですよ。少々考え事をしていただけですので」
「これからの勉強についてでしょうか?」
「はい。そろそろ机に向かう勉強ではなく、実践してみましょう」
「!…はい!」
良かった。特に何もなさそうだ。それはそうとして、やっと、やっと屋敷の外に出れる。やったー!
屋敷の外には何があるのだろうか。流石に物語と噂話と先生の話くらいしか情報が無い。念の為、幾つか不測の事態が起きても問題ないよう備えておこう。
準備したら、その日が来るまで大人しくして待つのみ。たのしみだな〜
――――――――――
後書き
後悔……うぅ、あの時やっておけば良かった………勉強……
次の更新予定
2024年10月16日 12:00
呪いの宝石と復讐者 黒薙神楽 @kuronagikagura
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