第7話 崩壊の序曲
国の中枢を牛耳る権力者たちの私利私欲が頂点に達し、国の財政はほぼ破綻状態にあった。税金は限界まで引き上げられ、国民の生活はますます困窮していった。彼らが生きるために必要なものすら手に入らない状況で、絶望の声が国中に広がっていた。
そんな中、ついに他国の軍が国境を越え、侵略を開始した。国民たちが飢えと混乱の中で身を守る術を失っている今、隣国の強大な軍事力は止めることができなかった。ダリアスの王国は、防衛すら満足に行えない状態に陥っていた。
「王よ、侵略軍が南の領土を制圧し始めました。このままでは首都まで侵略されるのは時間の問題です!」
側近が血相を変えて報告に駆け込んできたが、ダリアスはすでに無気力な状態だった。何度もこのような報告を聞いてきた彼は、もはやその現実に立ち向かう意志を持たず、ただ沈黙するだけだった。
「…どうすれば良いのか。」
そう呟いたが、その声は誰にも届かなかった。王座に座る彼の姿は、かつての威厳を失い、ただの傀儡として機能していたに過ぎなかった。権力者たちはすでに自らの逃げ道を確保しており、国を守るために何の行動も起こすつもりはなかった。
「この国はもう終わりだ。」
宮廷内では囁かれる声が増えていた。権力者たちは、国外に資産を移し終えた者たちから順に、密かに国を離れ始めていた。彼らはダリアス王国が滅びることを確信しており、自分たちが生き延びるための準備だけを進めていた。
「王よ、我々が残された時間は少ない。国民は暴動を起こし、軍はほとんど無力化している。逃げるなら今しかありません。」
最も信頼していた側近がそう告げた時、ダリアスはついに自分が完全に孤立していることを悟った。かつて信頼していた者たちさえ、自分を見捨てようとしているのだ。彼は逃げるべきなのか、国と共に滅びるべきなのか、その答えを見出せずにいた。
国民の間では暴動が激化し、街中で略奪が始まっていた。もはや統治の秩序は完全に崩壊し、国は無政府状態に近づきつつあった。彼らは飢えと絶望の中で、自分たちの生存本能に従って動くしかなかった。
ダリアスの宮殿の周囲も、次第に暴動の波に飲み込まれ始めた。市民たちが門を打ち破り、宮殿の中に侵入しようとする中、ダリアスは自らの無力さに打ちひしがれていた。
「私は王だ…この国を守らなければならない…」
そう自分に言い聞かせても、その言葉にはもはや力がなかった。王としての責務を果たせず、国を救うための行動を取れなかった自分に対する自己嫌悪と後悔が、彼の胸に重くのしかかっていた。
侵略軍が次々と領土を占拠していく中、宮廷内の権力者たちは一人また一人と姿を消していった。彼らは逃げ道を用意しており、既に安全な場所に逃れつつあった。ダリアスだけが残され、孤立無援の状態に置かれていた。
「…逃げるか?」
彼は宮廷内を歩きながら、自らの選択肢を考えていた。だが、その考えは虚しく響くだけであった。どこに逃げたとしても、王としての誇りも、王国を救えなかった後悔も彼を追い続けることは明らかだった。
その時、遠くから轟音が響いた。侵略軍が宮殿に迫っているのだ。ダリアスはその音に震えながら、ついに自らが引き起こしたこの結末を正面から受け入れざるを得なかった。
「これが…私の選んだ道なのか…」
彼の心は無力感と絶望に包まれたまま、国の崩壊が始まる瞬間をただ見守るしかなかった。そして、崩壊の序曲が静かに、そして確実に鳴り響いていた。
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