第3話 滞る国政

国の状況はますます悪化していた。街では仕事を失った人々が溢れ、農村では飢饉が広がり、国全体が混乱の中にあった。ダリアスは、王としてこの国を治める責任を感じていたが、彼の采配はほとんど意味をなさず、権力者たちに支配された国政は機能不全に陥っていた。


「王よ、このままでは国が滅びます。どうか何らかの手を打ってください!」


数少ない正直者の官僚がダリアスに進言したが、ダリアスにはその状況を打開するための具体的な策が思い浮かばなかった。彼は会議の席で何度も無策のまま座り続け、公金を吸い上げる権力者たちが提案する利己的な政策を受け入れるだけの日々が続いた。


「まずは国民に安心を与え、働く意欲を取り戻すために税を減らすべきです。農村には支援を…」


その官僚の言葉は権力者たちの前で虚しく響いた。ダリアスがそれに耳を傾けようとする前に、すぐにマクシム侯爵が口を挟んだ。


「税の減少? そんなものは、国の経済をさらに混乱させるだけだ。国民が働かないのは彼らの怠惰が原因だ。これ以上、王国の財政を乱すような提案は到底受け入れられん。」


ダリアスはその言葉に対して反論することができなかった。彼は権力者たちの支配を受け入れるしかなく、その結果として、国の政策はどれも国民のためのものではなく、権力者たちの利益を守るためのものになっていった。


一方で、国民の不満は日に日に高まっていた。街では小さな暴動が頻発し、飢えた人々が商店を襲う事件が続発していた。農村では食料が不足し、農民たちは収穫を他国に売り渡さざるを得ない状況に追い込まれていた。国の隅々まで混乱が広がっていたが、それでも権力者たちは、自分たちの豪奢な生活を手放すことはなかった。


ダリアスは無力感に押し潰されるようにして、日々を過ごしていた。彼には国を立て直すための強い意思も、行動力もなかった。宮廷の中では、権力者たちが彼を傀儡として扱い、国の実権を握り続けていた。


「これが本当に私が望んだ王としての姿なのか…?」


ダリアスは王座に座りながら、ふとそんな疑問を自分に問いかけた。彼は王としての責務を果たすことに失敗し、国を守るための行動を起こす勇気もなかった。権力者たちの操り人形として、無意味な決定を繰り返すだけの存在になり果てていた。


その夜、ダリアスは再び宮廷の窓から外を眺めた。月明かりが暗い国の街並みを照らしていたが、その光は彼の心に届くことはなかった。彼の王としての時代が、国を滅ぼすためにあるのではないかという不安が、彼の胸の中で大きくなり始めていた。


権力者たちは、ますます自由にふるまい、国の未来を自分たちの利益のために食い尽くしていく。ダリアスは、そんな状況を変える力を持たないまま、ただ時間が過ぎていくのを見守るしかなかった。


こうして、国政は完全に滞り、国家の崩壊が徐々に進行していくことになる。

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