第2話 権力者たちの横行

ダリアスが王として即位してから数ヶ月が過ぎたが、国の状況は悪化する一方だった。権力者たちは彼を徹底的に操り、彼自身の意思は全く反映されていない。国民にとって重要な政策はほとんど無視され、宮廷内では富裕層や貴族たちが自分たちの利益を優先するばかりだった。


その日の朝も、宮廷では新たな法案が話し合われていた。権力者のひとり、マクシム侯爵が話の中心だった。彼は贅沢を好む裕福な貴族であり、金と力を駆使して、宮廷の実権を握っていた。今日も彼の提案する政策は、表面上は国の経済を活性化させるとされていたが、その実は自身とその周囲の仲間だけが利益を得るためのものだった。


「ダリアス王よ、我々の領地にさらなる資金を投入すれば、国全体の経済も活性化することでしょう。国民の負担は一時的なものですし、将来的には彼らも恩恵を受けるはずです。」


マクシムはそう言って微笑んだが、その言葉の裏に隠された意図は明白だった。増税と労働者からのさらなる搾取が計画されていたのだ。ダリアスはその内容を薄々察していたが、対抗する力も知識も持ち合わせていなかった。


「…わかった。それで進めてくれ。」


王は力なく答えた。その瞬間、宮廷の空気が微かに緩んだ。権力者たちはダリアスが再び抵抗しないことを確信し、心の中で勝利を確信した。


ダリアスが退席した後、宮廷の裏では豪華な宴が開かれ、権力者たちは酒を酌み交わしていた。彼らは自分たちの勝利を祝うかのように、贅沢な料理を楽しみ、金と権力を誇示し合った。彼らにとって、国民の苦しみは遠い存在であり、どうでもいいことだった。


一方で、国民たちは増え続ける税と労働の負担に苦しんでいた。市場は活気を失い、街角では貧しい者たちが食糧を求めてさまようようになっていた。国民が苦しむ一方で、権力者たちはますます自分たちの懐を潤していった。


「この国はどうなってしまうんだろう…」


ダリアスは夜、ひとり王宮の窓辺で外を見つめながら呟いた。彼は王としての責任を果たせず、国を守るために何をすべきかさえわからなかった。彼を取り巻く権力者たちは、彼を無力な傀儡として扱い、自らの利権だけを追い求めていた。


しかし、ダリアスの心の中にあった僅かな正義感は、少しずつ自責の念へと変わり始めていた。だが、その感情を行動に移すだけの力はなく、ただ時が過ぎるのを待つばかりだった。


そして、その間にも権力者たちは、国の富を吸い上げ続け、国民の声を無視し続けた。国の衰退は誰の目にも明らかだったが、誰もそれを止める術を持たないまま、腐敗はさらに進んでいく。


ダリアスは、自分が招いたこの状況に対する責任を感じながらも、その重荷に耐えきれず、無力さに打ちひしがれ続けていた。

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