偉いと自称する者に喰われた国家元首の采配

白鷺(楓賢)

第1話  選ばれた王

ダリアスは、ひとり王座に座っていた。先代の王が急死し、混乱の中で選ばれた彼は、すぐに王としての重責を感じていたが、それを果たす覚悟はできていなかった。国は長い間、権力者たちに牛耳られ、腐敗が進んでいた。そんな中、ダリアスは王として立てられたものの、周囲の権力者たちに影響されやすい弱い立場だった。


王になったばかりの彼は、国民に平和と繁栄を約束した。しかし、その言葉が空虚なものであることは、彼自身も薄々感じていた。彼には信念がなく、政治に対する明確なビジョンもなかった。ダリアスは国を治めるための強い意志を持たず、ただ流れに身を任せるしかなかった。


王座の周りには、強欲な権力者たちが集まっていた。彼らは表面上はダリアスに忠誠を誓っていたが、実際には自分たちの利権を守ることにしか関心がなかった。特に、宮廷の最も有力な者たちは、王が何もできないとわかると、ますます自由にふるまい始めた。


「ダリアス王よ、早速ですが、この新たな税制について議論したいと思います。国の経済を活性化させるためには、少しの負担が必要です。」


権力者の一人がそう提案したが、その税制は富裕層を優遇し、国民にさらなる負担を強いるものであった。ダリアスはその提案が国民にとって厳しいものであることを理解していたが、何も言い返せなかった。彼はただ頷き、その場を取り繕うことしかできなかった。


「…そうだな、それで良いだろう。」


無気力な王の決定に、権力者たちは微笑みを浮かべた。彼らはダリアスを操るのが簡単だと確信し、自らの私利私欲を満たすための計画を着実に進めていく。


ダリアスは夜遅く、王座にひとり残され、頭を抱えていた。自分がこの国を救えるのか、その疑念が彼を苦しめていた。しかし、その疑念に立ち向かう力も持たず、彼はただ時の流れに身を任せることしかできなかった。


こうして、ダリアスの王としての始まりは、無力なまま幕を開けた。彼はこれから訪れる混乱と苦難に対して、何の備えもないまま、ただ権力者たちの影に怯えながら王座に座り続けることになる。

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