第3話たんぽぽ

夜勤明けの週末。

寺前は酒が飲めないので帰宅したが、伊藤と荒川、藤岡はお好み焼きの「たんぽぽ」で、酒を飲んだ。

伊藤が藤岡にビールを勧めるので飲んでみたが、ビールは喉越しが良かった。

伊藤はデラックス、荒川は豚玉、藤岡は海鮮焼きを注文して、鉄板で焼き始める。

藤岡はお好み焼きを自分で焼くのは久しぶりだった。

器用に他の2人はひっくり返すが、藤岡は、「えいっ」

と、ヘラを2つ使ってひっくり返したら、失敗した。どうせ、焼けたら同じだ。

笑われながら、崩れたお好み焼きの形を整えた。

3人はシェアしながら、お好み焼きを食べてビールを飲む。


話題は專らスロットの話し。伊藤は先日5000枚出した出玉のレシートを失くしたらしい。そして、吉宗のやぶさめで当たりが確定したが銭が続かず辞めたらしい。

バーと確認してから、離席したと言う。

コイツらに、万枚の話しをしたらお好み焼き代を奢れと言うだろうから、藤岡は黙っていた。

18万円は貯金している。


パソコンを買おうと思っていた。

藤岡は人生で3回万枚を出している。二度目はBINGO、三度目は北斗である。


11時に入店して、散々飲み食いして1万6千円だった。伊藤が、

「お好み焼き屋で1万円以上掛かるって、オレ達、馬鹿だな」

と、笑いながら言っていた。


それから、荒川と藤岡は西区浄心のいつもの寿司屋で飲んだ。

普段は割り勘だが、1つ先輩の藤岡が奢る事が多かった。

途中、藤岡はトイレに立った。戻るとき、藤岡に気付いていない荒川は店員と喋っていた。

「アイツ、お金出すから付き合っているだけ。お金無かったら、あんなヤツと飲まないよ」

と、笑いながら店員と話していた。藤岡は悲しかった。

次の出勤から、荒川と飲む事を辞めた。割り勘の時だけ参加して、2人では飲み食いしなくなった。


帰宅してから、こずえのマンションに向かう。

こずえは、休みだったが待機だったので外出出来なかった。

病院から近い看護師は休みの日でも、待機があり何かあったら、病院に呼ばれるのだ。

だから、酒臭い藤岡を羨ましがった。

「ねぇねぇ、転職活動は?」

「今、しているよ。来週、面接。ガードマン早く辞めるから」

「21歳で、フリーターは恥ずかしいよ」

「そうかなぁ〜。結構多いよ」

「君は危機感を感じてないね」

「何で」

「25歳までには、結婚したいんだけど」

「……」

「早く就職して。ホワイトカラーしか私は嫌だからね。ブルーカラーは辞めて」

「……分かった」


こずえは、ホワイトカラーしか仕事と認め無いのだ。まぁ、歪んだ思想だが。

転職ガイドを読みながら、藤岡は仕事を探したが、ガードマンも慣れてきたところで転職はやる気が失せた。

で、1つの会社に電話した。

ハンドル工場だった。ハンドル工場は結局は3ヶ月しか働かずに転職するのだが、それは先の話し。

ブルーカラーの仕事を選ぶところで、こずえはうるさいだろう。

だが、給料は良かった。

ガードマン時代を楽しむ事にした。

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