第2話土曜日が休みの時

ガードマンに土日はない。

だから、同じ土日のない看護師のこずえと藤岡が休みが重なる日は、前夜に飲みに行っていた。


藤岡は21歳だが、自分のお金で焼き肉屋に行くと、大人になったと再確認した。


夕方まで、パチンコをしていて勝っても負けても2人は焼き肉屋に行く。

それが、勝った日には最高に上等な肉を食べる。

2人はまだ、社会人2年目。

ビールは余り飲まない。チューハイが專ら。


これが、ビールになるとホントに大人になったと言う証拠なのだが、まだ、舌はおこちゃまなのだ。

タンを焼きながら、2人は話しをする。

お互いの仕事の辛さを語り合う。

しかし、こずえは正式な看護師であり、藤岡は単なるフリーターだ。

将来の仕事の話しになる。

このまま、フリーターので甘んじる考えは藤岡には無かった。

だが、まだ、名古屋に不案内。

よく、名古屋を勉強してから就職するつもりでいる。

フリーター期間は、10ヶ月だったが、その10ヶ月はとても濃厚だった。


2人して、ビビンバやテールスープを飲むと、いつものカラオケ屋。

夏だったので、夏の歌縛りで歌った。

2人とも致命的な音痴。

だが、楽しかった。


22時、帰宅すると全身焼き肉屋の匂いがするので、2人でお風呂に入った。

洗いっこした。

この後、性的なことをするので、キレイに洗う。


この日は、こずえとエッチしたのだが酒の飲み過ぎで中折れして、フィニッシュしなかった。

だから、こずえは藤岡に舌と指でイかせてもらった。

2人が寝たのは24時過ぎ。

日曜日、2人でパチンコデート。


いつも、こずえは勝っている。藤岡は、スロット4号機にだんだん嫌気がさしていたのだが、この日、アントニオで万枚を達成した。

生まれて初めての、万枚。


その日は、吉野家で持ち帰り弁当を買って帰った。

名古屋に出てきて、数ヶ月。こずえのマンションに世話になっていたが、独り立ちをするために、自転車で30分離れた、西区押切から東区徳川町に引っ越した。

それから、こずえの家に入り浸りだった藤岡は1人賃貸マンションで暮らすことになった。

それでも、お互いに行き来していた。


ある日、2人で居酒屋でチューハイを飲んでいると、こずえが、

「わたし、妊娠した。産んでいい?」

と、突然言われた。

藤岡は頭が真っ白になった。よくよく考えて、将来は結婚するが、今は生活もままならないので、

「ゴメン。今回は堕ろしてくれ」

と、頭をさげた。

すると、こずえは悲しそうな目で、

「今のウソだよ。そうなんだ。トシ君ってわたしが妊娠しても責任持てないんだね」

と、言った。

この話しから、2人の距離は離れて行く。


だから、藤岡はガードマンを早く辞めたいと思っていた。

こずえを幸せにする為にも、定職に就かなくては。

月曜日、また、朝の6時に会社に電話を掛けて出勤した。

その辺りから、2人の齟齬そごが始まった。

火曜日、夜勤明け。

この日、藤岡は荒川と西区浄心の寿司屋で飲んだ。

荒川に勧められて、生ビールを飲んだ。

瓶ビールより苦くない。

それから、藤岡は生ビールを飲む様になった。

とりあえず、金の無い2人は寿司屋の前に、コンビニおにぎりを2個食べていた。

店での出費を抑えるためだ。


そして、飲み過ぎていつものリバース。

「ねぇねぇ、荒川君。僕はゴジラ」

と、言って盛大にリバースした。

荒川はクスクスと笑っていた。

こんな楽しい時期は既に序盤戦を超えていた。

藤岡はとりあえず、名古屋市の地図を買った。

それから、色んな区で飲み歩きするようになった。

荒川は最高の飲み友達だった。……のだが。

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