第9話 内心
影虎、影虎。落ち着け。
落ち着けるか! 落ち着けるものか!
ああ、あぁ、もう名前を思い出せない、でも可愛い、俺の、妹、
記憶が混雑してないか? なあおい本当に一旦落ち着けって。
影の天使である俺が回復魔法を掛けてやればこんな傷……、
あ、駄目だわ。魂が固まっててどれがこの子のものなのか分かんない。
はあ!? どういうことだ、治せないのか!?
うっせーなぁ! 回復魔法は本人の記憶を参照しなきゃできないの! でもその本人の魂が他のとくっついてて分かんないの! 俺とお前と一緒! もう怒るなようるさいなやる気なくすだろ!
……じゃ、じゃあどうしたらこの子は治るんだ?
う〜〜〜〜ん………。
なあ、頼むよドッペルゲンガー……。俺はアンタに俺の全てを与えた。奪われた。コピーされた。記憶、姿形、尊厳、愛。
全部全部全部、憎くてたまらない。
でも全部、許すよ。
だからどうか、この子を助けてくれ。
ん〜〜〜……。
一つだけ、方法がある。『原初の魔法』だ。
お前のウィンクのやつ?
違う違う。俺のじゃない。お前が使うんだ。
影虎。お前が俺と契約すれば、『肉体を造る魔法』を授けてやる。カリウドのボスが使っていた禁術だ。そうすりゃ魂の無い肉人形が作り放題。この子に新しい体を作ってやれるぞ。
魂の方は一旦取り出して保管して、ゆっくりバラバラにして探そう。
ただ、その代わり、
じゃあそうするか。
話早いなもうちょっと聞けよ。代償の話しなきゃよ。
何が望みだ?
簡単だよ。俺と契約するその代わりに、受肉してくれよ。
……は?
俺はこの子のパパになると、我が主君、天と約束した。だけどどうやらこの子はそれが嫌らしい。文字通り死ぬほど。
俺は人間じゃない。人の心を持たない。だからこの子を意図せず傷つけてしまう。
そこで、だ。お前が肉体を得て、俺と一緒にパパになって面倒を見るなら……『オッケー』なんじゃないか?
彼女、お前のことを気に入っている様子だったし。
……。
……一つ訂正がある。面倒を見る、というのは恐らく無理だ。彼女はそれを心底望んでいない。
まじか。
だから、見守る。俺達二人で。
おお、影虎、良いことを言う。じゃあ俺も覚悟を決めよう。
原初の魔法を持ち出すと俺悪魔になっちゃうけどまあ大丈夫だよな。約束を守るためなんだから天もお許しになってくれるはずよな。
え? 悪魔に? それ本当に大丈夫なのか?
大丈夫大丈夫、そんじゃあ
おいおい待て待て待て待て待て………
…
……
………
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