第7話 変身と変心
「知らなかったのか? 変身魔法を使えるのはドッペルゲンガーだけじゃない」
……ええと。
それ多分、肉体を変化させてるだろ? 見かけは大人のレディに見える。
人間が使うなら幻覚系がいいんじゃないか?
変身は肉体が固定されてる生物が使うにはちとキツイはずだ。
ましてや、十一歳が。
「ああ。もちろん肉体を変化させるのは死ぬほど痛い。だがそんなのは私にとってどうでもいいことだ。
姉妹と同じ顔を変えるのに抵抗はあったがな」
「それに私は人間じゃない。カリウドのボスが禁術を使った形跡はあるが、成果物が見つからないと言っていたな? その成果物は私と片割れだ。ホムンクルスとでもいうのかな。だから正確には私は六歳だ」
「同僚の娘だと嘘をついたのは悪かった。そうでもしなければ全てを話してくれないだろうと思ってな。話してくれてありがとう。私も全て話すことにするよ」
「この三年、私はカリウドをゆっくり滅ぼしながら母の痕跡を追い続けていた。それで理解したことがいくつかある。
彼女は禁術で自分の肉体と魂の一部から子供を二人作り、その子らを部下に丸投げして、ある程度育ったらよく出来た方を自分の中に戻す、ということを繰り返していたんだ。
目的は二つ。忠実な幹部を作る為、そして自身の魔力の強化の為。一石二鳥だろう?」
ほほう。
更に言うなら、成果物を手元に置かない、最終的に処分することで神罰から逃れようとしていた、かも。
「なるほど」
しかしボスには誤算があった。
天からの予言という形で、潜入捜査官がやってきたことだ。
「それから、影虎がドッペルゲンガーに乗っ取られたことも」
……正味な話、乗っ取れるなら誰でも良かったんだ。選り好みできる立場じゃないし、乗っ取りの経験が無かったから。偶々新人が一人になってたから、そいつにしたってだけに過ぎない。
今になって思えば、新人が新人の乗っ取りしたところで何になるよ。笑えるな。
「……ドッペルゲンガー。私はここに、復讐しに来たんだ。双子の片割れを殺したお前を、殺しに」
ほう、復讐。
悪くないね、退屈な人生を因果応報で終わらせるってのも。
しかしどうやって?
「お前の殺し方はお前から聞いたよ。ドッペルゲンガーは人間を取り込み続けることで、頭が狂って死んでしまうと」
ああ、言っちゃったねそういえば。
「私も身体に魂をいくつも持っているんだ。カリウドの組員のをね。ずっと集めてきたそれをお前に一気に詰め込めば、恐らくお前は死ぬだろう」
わお。そりゃすごい。よく集めたね。
「死が恐ろしくないのか?」
元々そういう設計だからね。
「そうか。なら、心は痛まないな」
……そうかい。
「……だが」
だが?
「お前の話を聞いて気が変わった。殺さないであげよう。……影虎に免じて」
…。
……。
………。
良い子に育ってくれてて嬉しいよ。
おかげで殺さないで済んだ。
魔女狩り部隊、包囲を解け。
あぁそうだ解散だ解散。
おい聞こえねぇのかとっとと失せろッ! じゃあ俺が暴れる方がいいのか、エェッ!?
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