第6話 御伽組コラボ②
『それじゃ、配信タイトルにも書いてるしさっき夕莉が零しとったけど、今回の企画について説明していくで。題して『御伽組お悩み相談会』! ってことで、ウチら四人とそれぞれのリスナーから募ったお悩みに、まぁ面白おかしく答えていこうってことやな』
『面白おかしく、じゃなくても良いとは思いますけど。真剣な質問にはちゃんと答えましょうね?』
『ウチにそんな相談が来てたらの話やけどな……始まる前にチラッと見たけど、『赤いピーマンはパプリカと言えますか?』だの『砂漠に時計が落ちていたとしたら、自然発生したと考えますか?(以下略)』みたいな変なのばっか来とったわ。落差ひどすぎるし最早お悩みでもなんでも無いやんけ……』
阿久良さんは呆れたようにそうぼやくと、気を紛らわせるように一息ついた。芸人枠というかツッコミ担当というか……周りに振り回されるタイプの人なんだろうな。
『ま、説明はここまでにして。そろそろ、今回『相談役』としてかぐやが呼んだ特別ゲストを紹介していこうと思うで!』
▶[おっ、ゲスト?]
[誰?]
[かぐや姫が呼んだってことは、やっぱあの人か]
[ゲスト……うっ、頭が]
……その言葉を合図と判断してミュートを解除し息を潜めて待機していると、司会の二人が話している間暇だったからか、綿摘さんと小声で駄弁っていた姉羽鶴さんが突然声を上げた。
『って、は!? ゲスト!? き、聞いてないんだが!?』
『いや、始める前にちゃんと言うたやろ……てか、そもそもゲスト自体はこれまで何度か呼んどるし、今更事更に言うことでも無いんやない?』
『い、いやまぁそうなんだけどさ……前回オトヒメが呼んだレヴィアセンパイが、嫌に記憶に刻まれてンだよな……そのせいで無意識に聞き流してたのかもしれねぇ』
『……あー、『食わず嫌いを克服しよう!』でイナゴの佃煮持ってきはりやった奴な。出身バレとるからって開き直りすぎな気せぇへん? とは思ったけど』
……思ったより続くな……?
どうしよう、一旦ミュートし直したほうが良いかな……いや、でも流石にもうそろそろ呼ばれるだろうし、タイミング被っても失礼だからこのまま行こう。声出してしまわないかは心配だけど。
『それ以前にあのチョイスは罰ゲームだろって……今日来てンのもそんな人じゃ無いだろうな……?』
『それは流石に失礼やない?』
『そうですよ! 私のママをあんな人と一緒にしないでください!』
『かぐや?』
▶[草]
[あれは凄かったな……]
[写真も上がってたけど絵面のインパクトヤバかった]
[苦手意識持たれてて草]
[まさか食わんだろうとネタ枠で持ってきたのに、真面目に受け取って食べられてレヴィアたんが一番困惑してたんよな]
[てかママって?]
[やっぱゲストってあの人か]
『あぁもう収集付かんくなってきた……! しゃあない、これ以上話逸れたらまた時間押すし無理矢理話戻すで! 特別ゲストはイラストレーターの『葡萄乃樹』さんや! お願いします!』
「っんぐ、い、今ですか!?」
もう少し続きそうだな、と油断して水飲んでた時に急に呼ばれて、思わず噎せそうになりながらなんとか返事を返す。
▶[草]
[あーもうめちゃくちゃだよ]
[葡萄乃樹?]
[葡萄ママ!?]
[誰?]
[思ってたより再登場早かったな]
チラリとコメント欄を見ると、かぐやさんのチャンネルでの配信とは言え、記念配信を最後まで見ていない人や私の事を知らない三人のリスナーの方々も見ているみたいなので、改めて自己紹介をさせてもらう。
「んん゙っ、失礼しました……今回ゲストとしてお呼びいただいた、姫竹かぐやさんのママの葡萄乃樹です」
『葡萄ママー!』
『じょ、常識人そうで良かった……』
『配信、見させていただきました〜、楽しかったですよ〜』
『知っとる人も多いと思うけど、先週のかぐやの記念配信にも来てくれとったんよ。切り抜きも結構上がっとるみたいやから、良ければ見てみてな』
各人各様の反応を返してくれる。
……思いの外好印象で少しほっとした。
これもかぐやさんと、レヴィアさんというライバーさんのお陰だろう。……後者に関しては比較対象が悪すぎるだけのような気もするけど。
『それじゃ、ぼちぼち初めて行こか。まずはウチに来とった奴からな』
阿久良さんがそう言うと、配信者が良く質問を集めるのに使っている質問箱サービスのロゴと相談内容が書かれた画像が配信画面に表示される。
【童子様と同じ鬼になりたいです】
『ムリや。次』
【犬と猿と雉と俺の中だとどれが一番好きですか?】
『猫』
【不眠症で夜しか眠れなくて悩んでいます。医師からもふもふは万病に効くと言われたので、童子様の狐の尻尾をもふもふさせて癒して下さい】
『帰れ』
【趣味で配信活動をしているのですが、FPS系のゲームが苦手で視聴者さん達を楽しませられているか不安で、配信でFPSゲームをするのは辞めようかと悩んでいます。どうしたら良いでしょうか】
『おっ、やっと真面目な奴が来たな。そやな――』
『ちょ、ちょっと待ってくれませんか〜?』
▶[流れ早!?]
[草]
[ほぼ相談じゃ無かったくない?]
[面白おかしくって言ってた意味が良く分かったわ……]
十秒と経たずに幾つもの相談……の体を成していない怪文書が消化されていくのを見た綿摘さんが、慌てたように阿久良さんを制止した。
す、凄い手慣れてる……前世切り抜きで見た、一期生の一人が質問箱で来た質問を100個連続で切り捨てている配信と同じようなスピード感だった。
内容も最早大喜利な物ばかりだったし……AsterLiveはファンの人達も面白い人が多いのかな。
『ん? なんや?』
『なんや、じゃありませんよ〜……』
『いきなりハイペース過ぎじゃね!? そんなサクサク進められたらアタシら反応出来ないんだが!?』
『ええよあんなん反応せんで。最後のみたいなまともな奴が来たら答えたってくれたらええから。他はウチが処理する』
『処理って……』
あまりにもあんまりな言い様に苦笑しているかぐやさんを尻目に、阿久良さんが気を取り直して再度口を開いた。
『んじゃま、相談の方に答えると。向いてないモンは仕方無いんやない? ウチやってオープンワールド系はどっから進めたらええか分からんくなって躓くタイプやから配信してへんし。他で強みがあるんやったらそっち伸ばしたほうが長続きするんちゃうか? ……ってことで、次かぐや、頼むわ』
『んー……私は、それを自分がやりたいかどうかが大事だと思います。配信は、誰かを楽しませることを意識するより前に、まず自分が楽しまないと。やりたかったら続けたらいいし、やりたくないんだったらやめて別の事をしても良い。それが配信活動なんじゃないかなって思います』
『アタシも自分がどう思ってるかが大事だとは思う。でも苦手だから辞めるってのは浅慮じゃねぇか? とも思うな。勿論練習した上での結論がそうなのは分かるけど、地道に続けてけば、急には上手くならなくても少しずつは変わってくだろ』
『私もですね〜、FPSのようなPvPは苦手なのですが〜、敵を倒しに行くのではなく、味方を守りに行くと考えを変えたら立ち回りもマシになりましたよ〜。私のようなタイプで苦手意識を持っているのかは分かりませんが〜、同じように考え方を変えてみるというのも、試してみると良いかもしれません〜』
『……普段おちゃらけてばっかやから、改めて真面目に相談乗るとなんかむず痒いわ……っと、葡萄乃樹さんはどうです? この相談』
……ゲストだし最後に聞かれるだろうなとは思ってたけど! そもそも私、前世含めて配信もFPSもしたこと無いんだけど!?
それぞれちゃんと真面目に違う答え方をしてるから、その後に私に聞かれても四人と同じレベルの返答なんて返せる気がしない。
「えっ、と、そうですね……そもそも俺は配信活動もFPSゲームも見るだけでやったことは無いので、的外れだったら申し訳ないんですが……視聴者の方々がどう思っているのかが気になるのでしたら、一度、その視聴者の方々にも同じように訊いてみては如何でしょうか。その人達は、『上手いプレイ動画』ではなく、『貴方自身のプレイ』を求めて視聴しているのかもしれませんよ。その答えを知ってからでも、やめるかどうか選択するのは遅くないのではないでしょうか?」
……俺も、イラストを投稿し始めた頃は、ネット上にゴロゴロ居る神絵師さん達の絵を見て打ちのめされることも少なくなかった。
でも、俺のイラストを見て好きだとコメントしてくれた人達が居たから続けようと思えて……その結果の一つとも言えるのが、『姫竹かぐや』さんだ。
やっぱり何にしても上手いに越したことは無いけど、高い所だけ見てただ闇雲に続けていても、いつか挫折してしまう。
応援してくれている人が居るのなら、まずはその人達の言葉をちゃんと聞かないと……なんて、素人が言っても説得力は無いけどさ。
『……お、おぉ……成程な、苦手であること含めてその人なんやから、無理に克服しようとする必要は無い、ってことやな』
『私達とは少し方向性が違う解決方法でしたね〜、でも、とても良いと思いますよ〜? 確かに私も、リスナーの方々の応援が糧になってここまで続けてこられましたから〜』
『……ま、誰も居ない中練習だけ続けてても辛いしな。いっそ練習してるのを配信しても良いかもしれないな。トークスキルはめっちゃ要りそうだけど』
『うんうん……! やっぱりママはこうなんですよ……!』
▶[イラストレーターらしい感じの答えだな]
[やっぱ反応がないとモチベって続かないから]
[かぐや姫の後方娘面は何なの?]
[後方娘面は草]
『――それじゃ、こんな感じで次々進めてくで!』
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