不器用で、それでも自分以外の何かのために戦うヒトたちの物語

これはEP1まで読了しての感想になります。

まず最初に作者様へお伝えしたいのですが、”最初から最後までずっと面白いなあ”と思いながら物語を楽しませていただきました。
文字数も多いはずなのにすいすいと読み終えてしまったのは、惹きこまれる世界観はもちろん、読者を没入させるようなパワーがこの作品にあるからなのだと思います。
特に、王都エディンオルの街並みが丁寧に描写されていて、私もライアンとリリアに連れだって歩いているような気持ちにさせられました。


続いて登場人物について、主人公のライアンとリリアの魅力と不器用っぷりは他にレビューされている方々に語りつくされてしまっているので割愛したいところですが。。

騎士の何たるかがわからないと嘯いているくせに一本芯の通った騎士道精神を持ち合わせたひねくれ騎士ライアンと、それをけなげに支えるキュートで不器用なリリアのバディは最高でした、とだけ。


私が最も心をつかまれたのはシェリーでした。
初登場シーンではゴロツキか盗賊かと思わされましたが、その正体はリアンダール王国のお姫様だったシェリー。
自らが守るべき国を知るため、危険を承知で素性を隠し城下を闊歩する姿に、王の資質を感じずにはいられませんでした。

主人公のライアンは、騎士として姫であるシェリーに仕え、飲み仲間として貧民街の酒場でシェリーのやけ酒に付き合いますが、そんなライアンを見るシェリーの心中は物語が進むにつれて複雑になっていきます。

国のために命を賭して戦おうとするライアンに対し、姫として背中を押すべきとわかっていても、本心は止めたいと願ってしまう。
それは飲み仲間としてなのか、それとも。。。

長くなりましたが、不器用で男勝りでちょっぴり乙女心が垣間見える、そんなシェリーが私にはとても魅力的に映りました。



そして最後に。
この物語を読んで、ヒトとアクマの違いは何だろうと考えました。
物語の中でリリアは悪魔として登場し、ライアンと『魂の契約』を結びます。
これが履行されるとライアンはリリアに自らの魂を渡すことになり、それによってライアンは死に、リリアは人になることができるというのです。

ですが物語を読み進めても、私にはリリアが悪魔とは少しも思えませんでした。

リリアはライアンとの『魂の契約』が履行されてしまうことをずっと恐れていました。
自分を大切にしてくれるライアンを、自分の身を顧みず国や人のために戦う素敵なライアンを、自らの手で死なせることになるからです。

こんなに誰かのことを想える生物はヒト以外にあり得ないと思うのです。

ライアンもリリアもシェリーも、国のために力を尽くし、ヒトの皮を被ったアクマに裏切られ、そしてそれを乗り越えていきます。

策謀うずまく中、最後に読者をも裏切る(いい意味で)結末が待っていました。


本当に面白かったです。
EP2以降もゆっくり楽しませていただきます。



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