第15話
広田は願掛けのように走っている。
学生時代の友人と爆弾が載る
タクシーを見つけ出すためだ。
東京実践科学大学まであと僅かだろうか。
思えばこの1日、非日常を味わってきた。
もうここまで来たら
彼らを失うわけにはいかない。
学生時代のことを少し思い出してみたのだ。
「それ読んだの!!」
彼はよく会う。
図書室の窓際の席に座っている。
「最後のどんでん返し、
前作に引き続き巧妙だね」
「分かってるね」
「もし、俺が犯人ならどうしてたかな」
彼は眉を少し顰めてこちらを見る。
「え、やっぱり考える?」
「うん割とね」
「え、稲田くん、これも読んでみて」
と私は彼に文庫本を差し出した。
そんな風な毎日を過ごしている。
「お、ありがとう」
彼は受け取って裏表紙のあらすじを読む。
「これ警官が犯人?」
その通りだ。
「え、すごくないか」
「俺あらすじ読んだだけで
犯人当てちゃったの」
そんなことを思い出したのだ。
あの建物は大学のキャンパスだろうか。
もうじきにたどり着くだろう。
そう何故そんなことを思い出したかというと、私が怪しんでいるのはそう彼の方だ。稲田だ。
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