第14話
「それではどのようにしますか」
安村は真剣な表情で問いかける。
「一人は探偵役を」
彼は私の部屋の机で肩肘をつく。
「思いつきで、広田さんはどうですか、
僕まだ会ったことが」
「ではそうしよう」
私たちはそれからある計画を企てた。
それはこの場所、メゾンドアベニューの住人を巻き込んで、実験を行うことだ。
まず初めの日、指定された曜日に
奇跡のように、広田以外の全員が
私の部屋に集った。
「何も怪しいことではなく、これはゲームです。
今から狼を決めるので、
その狼を皆様で探していただきたいのです」
それから私たちは狼を探す。
疑って疑って1週間後のある日、
決断を下す日が来た。
その日も変わらずに夜20時前、私の部屋に
集まった。そこで事件が起きたのだ。
「それでは、1週間が経ちました。
狼を決めましょう」
皆が皆で話し合っている。
その時、清瀬の動きを見た。
「ちょっと清瀬さん」
「なんですか?」
彼は私の部屋にあるパイプ爆弾に手をかけた。
「清瀬さん、危ないですよ」
彼は慌てたのか、
その爆弾を床に落としたのだ。
それは破裂し、火花を散らす。
その影響で辺りは急に静まり返る。
見事にそれは彼の心臓をも襲い、
部屋は煙の充満した嫌な匂いもする。
それに気づいた住民たちは悲鳴をあげる。
私はどうすることもできなかった。
「か、彼、死んじゃいましたよ」
と慌てた様子で安村が言う。
やってしまった、役目を果たす前に
自らの武器で人を殺めてしまった。
「まずは落ち着きましょう」
と佐々木の夫が言う。
30代女性三浦が、
「みんなで隠蔽すればなんとかなります」
という。
嫌な汗をかいているが、その言葉に救われた。
どうにか隠蔽をするのだ。誰にも気づかれず、
ここにいる6人のみの秘密だ。
私にはやるべきことがある。
安村、彼と語った復讐を果たせずに
終わるものかと。
絶対終わってたまるか。安村は、
前のめりで倒れ込む清瀬の後ろポケットから
彼の部屋の鍵を見つけた。
20代女性の永野はまだ現実を
受け入れることができなかった。
「彼を部屋まで運びます」と呆然としている私を横目に安村は彼を運ぼうとする。
重いと、安村はこぼすと、
俺も手伝うと佐々木が言った。
彼等は顔面が崩れ果てた清瀬を背負い、
佐々木の妻が鍵を施錠する。
階段を一歩一歩、降りていく。
慎重に一段一段と。
よしきた、と階段を下り切る。
「部屋、開けといてくれ」佐々木が言う。
彼の妻は必死にドアを支える。
私は爆発したまだ焦げ臭い
パイプ爆弾をもって一階に降りる。
急足で階段を降りていく。
佐々木と安村は廊下を通り、
居間にある椅子に座らせる。
続くようにパイプ爆弾を持って
私は部屋に入った。
その椅子の前にある机にそれを置く。
「あとは、自然に」と佐々木が言う。
「何もなかったようにしましょう」
焦げた匂いの部屋を抜けて私たちは外に出た。
鍵は施錠し、彼のポストの中に入れた。
それから再び私たちは話し合いを設け、
近所のファミレスで12時近くまで
話をしていたのだ。
自分たちの目の前で人が死に、自分たちの住むアパートに死体があるという現実が恐ろしく、皆帰りたくないと思いだしたのだ。
それから私は皆に宿泊費を渡し、
今日は近くのホテルに泊まるように言った。
それもバラバラで。
私も、私の部屋で彼が死んでしまったものだから帰りたくはなかった。
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