第16話
「中島くん。君が人狼だ」
私はそのパイプ爆弾を彼の元へと持っていく。
彼は必死でもがく、離せ。
必死の抵抗で体を後ろに捻る。
窓の外には警察が来ている。
幾つかのパトランプをみて
彼は必死に叫ぼうとする。
身を捻り出し、必死の抵抗だ。
彼なりの抵抗で、1人の警官がそれに気づく。
「ちょっとちょっと、
私たちも死ぬじゃないの」
「やだ、死にたくない」
「死ぬのはこいつだけでいいだろ」
そんな声が溢れ始めた。
混乱の最中、窓の外に
一台のタクシーがやってきたのを見た。
約束の時刻までは7分。
もうしばし、この時間を伸ばす。
「稲田さん、着きましたね」
彼は到着したにも関わらずその場を動かない。
「稲田さん、ねえ稲田さん」
彼はしばらく黙ったのち、口を開いた。
「佐々木さん」
運転手は後ろを振り返る。
「本当の爆弾はどこにあるのか教えて下さい」
「それは教えられません」
慌てた国平は彼らの顔を見て問いかける。
「一体どういうことですか?
説明してくださいよ」
黙ったままの稲田は、生唾を呑み込む。
「何を隠してるんですか、稲田さん」
その突如、タクシーの窓を叩く音がした。
広田は息を切らしながら、
車内の稲田に問いかける。
やがて稲田は数人の警官がいる外に出た。
彼らは構内で起きていることに
気を取られているようだ。
「やっぱおかしいなって思ったよ、
君はいつも読んだ本を読んでないと答えていた」
続けて国平も外に出る。
「あらすじだけで犯人が分かるはずない」
稲田はしばらく空を見ていた。
やがて数台のパトカーも近辺に止まる。
数秒の沈黙ののち、彼はいう。
「弱いものを擁護することは
いけないことか?」
国平が驚いた表情を見せ、
「どういうことですか」という。
彼は頭を二、三回ほどかき、
重たい口を開いた。
「俺も住人なんだよ、メゾンドアベニューの」
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