第12話
先生、絶対そんなことはしないでください。
そんなことをしたら自分を殺してしまいます。
その声がやけに頭に響く。
だが、私は間違いなく死の淵に立っている。
もしかすると本当に誰かを殺しかねない。
これは成功と言えるのか?
果たしてこれは成功なのか?
人生を棒に振ってしまった、
と思う瞬間がある。
しかし、ここにいるのは
裁かれてもいい人物たち。
私は何も悪いことはしていない、
然るべき対処をしているまでだ。
彼はしっかりやれているのだろうか、
あのタクシーは無事にこちらへ
向かっているのだろうか。
そんなことを考えていると恐ろしくなり、
目が霞み、耳が聞こえなくなる。
耳鳴りのようなその気持ち悪さは
耐え難いほど聞こえてくる。
先生、先生とその声が反芻してくる。
「先生」
私はハッとなり目を覚ます。
視界にピントが合った。
「人狼を決めてください」
ここにいる8名の生徒は皆手足が縛られている。
彼や彼女らも皆、不自由な状態で
長方形の形の机に向かい合うように座る。
三人ずつ横に座り、
両側に一人ずつ座っている。
彼らはランダムで私から
役職の書かれたカードを見せられる。
もちろんそれは混ざっていて、私も知らない。
まあ、そんなことは上辺だけのように、
爆弾は爆発してしまうが。
ここまでは計画通りに進んでいる。
誰も邪魔をするんじゃない。
ここまでの覚悟だ。
終わらせる。
「とはいえさ、今回の事件は謎が多いよね」
稲田はタクシーの車内でつぶやいた。
国平はスマートフォンで
ニュースを凝視している。
「これ見てくださいよ、この記事の書かれ方」
「ほう、これじゃまるで
犯罪擁護しているみたいじゃん」
タクシーは徐々に大学へと近づいている。
そのトランクの中には
もうじき爆発するパイプ爆弾が
忍び込まれていた。
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