第11話
「今安いアパートさ住んでで困ってる」
と西山に言った。
「家賃どのくらい?」
「4万」
壁は薄い、日当たりの悪い部屋だった。
「一緒に探そうよ、良さそうな物件」
私はとても嬉しかった。
「え、そこ私の住んでるアパートだよ」
と岩本は言った。
「だよね、だよね、よろしくお願いします」
「いつでも分からないところ教えに行けるな」
と彼は言った。私は笑みを浮かべた。
最近どうもよく笑っている。
「花火ってどういう理屈で綺麗なの?」
と西山は言った。
「火薬さ混ぜである薬品さ含まれる金属が
炎色反応起ごしてっからなんだ」
と私は言った。
「そうなんだ、今年は見たいな」
なんて会話もした。
私はそれを思い出してにやけた。
そんな或る朝、事件は起きた。
私はその日もいつものように
いつもの席に座り、
授業の支度をしていた。
普段の倍は人の目を感じた。
おそらく皆、私を見ている。
確実に私を見ている。
聞いた?聞いた?
なんか自業自得っつーか。
当然でしょ。
そんな会話が駆け巡る。
極めつけにその会話は、
西山本人のことだと私は勘づいたのだ。
自殺したんだって
少しずつ私の世界が崩れていくのが見えた。
どうやら学費を稼ぐために
水商売をしていたらしい。
その情報が彼女の元恋人に拡散されたのだ。
それが影響で彼女は陰で陰湿な
いじめを受け続けていたようだ。
それが積み重なり彼女は自ら命を絶った。
私に目をつけていた彼らとその時目があった。
行こうぜ、と声がして彼らは
こちらに向かってくる。
彼らは笑いながら「死んだね」と
彼女を貶したような言い振りで言った。
私は堪えてきた分体に影響が出てきた。
見事に震え始め、拳を握り締めた。
「なしてだ、なして彼女を責めんだ」
と私は震える声を上げた。
そのうち二人は笑って私を見た。
蔑んだような目で私の怒りは形を帯び始める。
ぎゅっと握りしめた拳には手汗が湧き出る。
「そんな悔しかったらよ、
仕返しでもしてこいよ」
と一人が言い放ち、彼らは笑って離れていく。
私はその後ろ姿を見て
「ばんっ」と大きな声を上げた。
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