第5話


本当に知らなかったのかと稲田は驚く。

私はそう何も知らない。何も覚えがないのだ。

まだ数名の人間が現場で調査をしている。

「ついさっきのことだ。住人が見つかった。20代の、

なんつったっけな、女の人」

「永野さん」

「そうそう、彼女に訊いてみたんだ。

どうして自宅にいなかった?と」

「そしたら」と私は聞く。

「彼女は少し困ったように指示された、

と言っていた」

「誰に」

「誰にとは言わなかった」 

ますます謎が深まるばかりである。

「それじゃあ、彼女と人狼ゲームの繋がりは」

私は思い立つが故に言った。

「彼女は、おそらく市民だ」

「だとしたら占い師は?」

彼は少し考えた上で、

「大学生の彼か、君になる」

確かにそうだと私は納得した。

一概に根拠はないが、

割り振られている役職で1人のみのものは

狼、占い師のみだ。

殺された清瀬が狼だとすると、

占い師が私が犯人かという理屈である。

「それで犯人が占い師だと言ったら相当狂ってるな」

なんて私は言った。

このゲームの理論上、私も参加しなければいけない、なんて思ってしまった。知らない場所で、私は仲間はずれになっていたのかもしれない。

ますます謎が深まりつつあるこの事件だが、もう一つ厄介なことが起きた。

それは彼の携帯にかかってきた一件の着信だ。

彼は受話器越しにその事を伝えられる。

彼は驚いた表情で分かった、とだけ言った。

電話を外した後に彼は私にもその事を告げた。

「大学の授業における人間の心理調査」

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