第2話
私は首を傾げた。一体どういうことか?と。
「夜逃げみたいな形で今全員いらっしゃらないみたいなんですよ。今日は土曜日なんで、どこか出かけるのは分かるんですけど全員ってなると」
曖昧な記憶だが、このアパートには8部屋あり、
私の住む下の階は
私の部屋、亡くなった清瀬、名前の知らない30代の女性、18歳の大学生。
上の階は強面の顔をした40代の男性、20代の女性永野さん、最近結婚したカップルの佐々木、残り一部屋が空室である。
まず私は考えた。
「グルですかね、?」
そんな考えはよろしくないが、
「と言いますと」と私は言った。
「同じアパートに住む方を疑うのは悪いんですけど、このタイミングでってなると少し怪しいですよね」
うんうんと国平さんも頷く。
「私たちもね、そう考えるのが普通ですよねやっぱり」
「そういえば昨晩の雷、凄かったですね」
と下世話な話を彼はしだした。
確かに昨日、短時間の間に大荒れの天気になった。
「すごく短い間でしたよね」と私は言った。
すると国平、と呼ぶ声がした。
彼は振り返り、今行きますと言った。
私はその声で分かった。聞き覚えのある声だ。
私は靴を履いた。
「どこか行かれるんですか」
「いや、」
と玄関の外へと飛び出した。やはりそうだ。
彼も目があったようですぐに気づいた。
「広田くん、やっぱそうだったのか」
高校が一緒の稲田くんだ。彼が警察官になったのは風の噂で聞いている。
「お知り合いですか?」と国平が言う。
「はい、学校の同級生で、同じクラスもありました」
そうなんですかと彼が言う。
「こんな真隣に住んでたのか」
と彼は少し笑みを浮かべる。
「参っちゃうよ本当に」
彼とはかなり面識がある。今でこそ少ないが、彼とは高校の図書館で何度も会った。
回数を重ねるごとに我々は仲良くなったのだ。私は生粋の推理小説が好きでよく読んでいる。それこそ最近はなかなか読めずにいたが、彼もそのことをよく知っているだろう。
「こんなにも身近に殺人事件が起こるとはな」
「まさかね」と私は言った。
私は彼に聞いた。彼なら聞けると思ったのだ。
「ちなみに、死因って?」
「パイプ爆弾」彼は答えた。
パイプ爆弾?と私は少し考えた。
「そう、パイプ爆弾。少し頑張れば自分でも作れるらしい」
「それじゃあ、自殺ってことも」
「ほうほう、さすが推理小説マニア。それがね、そうでもなさそうなんだ」
私は再び考えた。
「不自然に空いているカーテン、それだけじゃ理由にはならない。彼が死亡したとされる時間が21時過ぎ。
その時に誰かが家に来たんだよ。インターフォンを押してるんだ。」
「じゃあ顔も写ってる筈じゃ」
そうだと私は彼に言った。
「今から殺しに行くって場所に顔も隠さずにくるか?」
それはそうだと私は私の中で納得をした。
国平が稲田にそろそろですよと言う。
「じゃあまた、君の推理を聞かせてよ」と彼は言って去った。
私はドアを開け、再び部屋に戻った。
腰をかけるとすぐに私は近くにあるノートパソコンを開いた。検索窓に『パイプ爆弾』と打ち込む。
パイプの中に火薬と発火するものを入れ両端にネジを切り密封することで製造される爆弾らしい。
確かに自分で作ることも可能。事件も度々起こるらしい。
私は昨日の雷を思い出した。
確かに低い轟音が鳴り響いていた。
それに混ざったのか音は確かに聞こえなかった。
にしては妙だ。
日常生活においても隣の部屋の物音は聞こえる。
昨日、隣で爆発したのだ。それに気づかない。
それでは私がコンビニに行っている間に起きたと考えていい。爆弾。それはおそらく誰もが反応する大きな音だろう。
私は再び、そのことについて考えた。
そう、私以外全員が消息不明のこのアパートのこと。
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