《未来》好感度メーター上昇中Ⅰ

【注意】この話は『《未来》有栖川由姫との出会い』の後日談になります。



 私、有栖川由姫が正修さんと結婚してから数日が経過した。


 苗字が変わり、住む家も変わった。

 しかし、一番変わったのは私の体調だ。

 驚くほど体調が良くなった。ぐっすり眠れるし、胃痛も無くなった。どれだけ今までストレスを抱えていたんだろ。


 そして、私の気持ちにも少しずつだが変化がある。

 彼の事が、正修さんの事が好きになり始めている。

 いや、好きになることは問題じゃない。というか、結婚したんだから好きにならないと困る。


 問題なのはその速度だ。

 正修さんは「ゆっくりとお互いを知っていこう。その過程で俺の事を好きになってくれたら嬉しい」と優しく言ってくれた。

 だから、私は半年とか一年とか、じっくりと時間をかけて、彼の事が好きになるつもりだった。

 なのに……


「昼間、二人でいられないのが寂しいと感じるって、相当よね……」


 私は大きなため息を吐いた。

 私の彼への好感度をパーセント表記するなら、既に八〇%は溜まっている感じだ。


「あれ、もしかして私ってちょろい……?」


 学生時代、いくら男子に告白されても全然ときめかなかった。

 だから、私は男子に対する免疫があるものだと思っていた。


 しかし、それは私が心を閉ざしていたからであって、実際は自分を助けてくれた王子様に一目ぼれするような女だったのだ。


 もちろん、私を助けてくれたからというだけの理由で好きになったわけではない。


 きっかけはそこかもしれないが、家で仕事をしている時の横顔とか、部下に電話をする際の気取らない態度、私の作った料理をおいしそうに食べてくれるところ、惚れポイントが徐々に溜まっていたのだが。


 私のゲージは思ったより短く、あと少しで溢れてしまいそうだった。

 そして、彼の事が好きになるとどうなるか。


「恥ずかしい事が多すぎる……」


 男の人と同棲など初めての事なのだが、自分のプライベートを共有するというのがこんなにも恥ずかしいとは思わなかった。


 寝癖がついてないかとか、トイレの音を聞かれてないかとか、普段人に見せない部分を見られるのが恥ずかしい。


 同棲し始めた初日や二日目は比較的問題なかった。だけど、彼の事を夫として好きになればなるほど、恥ずかしいという気持ちが増していく。


 慣れるまで、彼の事を避けて生活するという手もあるけど、嫌われていると思われかねないし、恩のある彼にそんな事はしたくない。


 どうしよう。誰かに相談したい気持ちだ。


 こんなことを相談できる知り合いは一人しかいない。仕事で忙しいと思うけど、時間があるか聞いてみよう。


 私は携帯を取り出しと、御神静香と書かれたアカウントにチャットを送ったのだった。

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