第32話 若葉祭に向けて
その日の生徒会で、さっそく若葉祭の打ち合わせがあった。
「あー。そっか。もうそんな季節かー」
副会長は面倒くさそうに頭を掻いた。
「私達の仕事は、イベントの立案。配置。委員会メンバーへの指示など沢山やることがあります。大変だと思いますが、頑張りましょうね」
会長の手には大量の書類があった。全部若葉祭の準備に必要なものだろう。
「まず最高責任者を決めようと思います。去年は優馬元会長がすべて取り仕切りましたが、今回は昼の部、夕方の部で分けようと思います。私は昼の部を担当。夕方の部は、有栖川さん。貴方に頼んでいいかしら」
「は、はい。大丈夫です!」
由姫は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに嬉しそうに返答した。
「で、でも、どうして私なんですか?」
「一番責任感が強そうだからですよ。大変だと思いますが、成長する良い機会でもあります。任せていいですか?」
「は、はい! かならず成功させてみせます!」
由姫は小さくガッツポーズをすると
「私の方からお願いしようと思ってたけど……まさか会長から任せてくれるなんて……」
と小声で呟いていた。
会長は「これでいいのよね?」と言いたげな表情で、俺に向かってウインクをした。
サンキュー会長さん。
「他のメンバーも昼の部と夕方の部で分けますか?」
「そうね。昼の部は三人、夕方の部は二人で分けることにしましょう。昼の部は一人多いので、備品の管理は昼の部が受け持つことにしましょう」
「了解です」
「では、私と有栖川さんのじゃんけんで残りの三人を取り合うことにしましょう」
会長と由姫がじゃんけんをする。
「あら、私の勝ちね。じゃあ……」
会長はゆっくりと指をさした。副会長や菅田先輩――ではなく、俺を。
「鈴原くんを貰おうかしら」
「え……」
由姫の喉からひゅっという音が漏れる。その反応を見て、会長はくすりと笑うと
「なんてね。冗談冗談。普段から一緒に仕事をしている面子でやるほうがいいわよね。私は理沙と望太郎を貰うわ」
と言った。
会長、さては由姫の反応を見て遊んでいるな。
「あー。良かった。十年来の友情にひびが入るところだったよ」
「あら。やっぱり、鈴原くんを選ぼうかしら。真面目に作業をしてくれなさそうだし」
「やだーーー! 真面目にやるから見捨てないで!」
会長と副会長のコントが始まり、他のメンバーが苦笑いを浮かべる。
「……った……。取られなくて……」
副会長の声のせいで殆ど聞き取れなかったが、由姫が何か安堵するように呟いていた。
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