第33話 焦りと失敗Ⅰ
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まず俺達が始めたのは去年の若葉祭の内容を調べることだった。
大成功と言われている、優馬が主導した若葉祭。まずはその成功の秘訣を調べようとしたのだ。
だがしかし、調べれば調べるほど、俺達の顔は曇っていった。
「おいおい。反則だろ、これ……」
イベント内容のパンフレットに決算書、そして結果報告書を見て、俺は頭を抱えた。
運動部主催の食べ物の屋台や文化部の出し物など、イベント自体は普通のものばかりだ。
だが、夕方に行った体育館を使った特殊イベント。
イケメン俳優で話題の鏑木翔一を迎えてのトークショー。
ABK48の研修生三名を集めた生ライブ。
男子生徒と女子生徒、両方が喜ぶトンデモイベントを開催していた。
「一体どうやったんだ? こんなの予算内で出来るものじゃないだろ」
「多分、兄さんが個別にお願いしたんだと思う」
「はぁ!? そんなこと出来るのか!?」
「うん。兄さん、中学生の頃、ジュニアモデルもやっていたから、トークショーをした鏑木さんはその時に知り合った友人みたいで、たまにうちの家に遊びに来る。その繋がりでABKのアイドル研修生も呼べたみたい。中には昔付き合ってたって子も……」
マジかよ。イケメンだと思ってたけど、芸能関係にも伝手があるのか。
「俺達はそんなチート技は使えないから、他の方法を考えるしかないか」
「そうね。まず、予算の割り振りを行いましょう」
由姫は予算書を机の真ん中に置き、とんとんと指をさした。
「学校から支給された予算は六十万円。これを昼の部と夕方の部で割るから、私達が使えるのは三十万円ね」
「三十万円か……。少ないな」
「そうね。私も同じ意見」
由姫はこくりと頷いた。
運動部と違って、文化部は同好会も合わせて二十もある。すると、一つの部で使える予算はたったの一万五千円だ。
「っ……………………」
どうすれば去年の若葉祭を超えられるか。俺と由姫で二人で考えたが、すぐに良い案は思い浮かばなかった。
イベントを行うのはあくまで部活動側だ。
生徒会が出来るのはイベントごとの予算配分。イベントの設営場所の確保。そして、機材や備品の購入ルートの用意などのサポートだ。
「そういや、去年の特殊イベントはどうやってねじ込んだんだ? 生徒会が行うのはあくまでサポート。主役は部活動側だろ?」
「トークショーは、映画同好会の催し。アイドルの研修生を集めた生ライブは、軽音部の催しとして実施したらしいわ」
「なるほど。ちゃっかりしてるな」
どうする? 俺も去年の優馬のように、イケメン俳優や、アイドル候補生を呼び寄せるか?
いや、それじゃ駄目だ。
優馬に勝つのは、俺ではなく由姫でなければいけない。俺が出来るのはあくまでサポートだ。
「ひとまず、部活側にどんなイベントを行うのか聞き込みから始めるか」
「そうね」
俺達は放課後に活動中の文化部へと向かい、どんなイベントをするのか聞いて回った。
困ったのは「これから決める」という楽観的な部が幾つもあったことだ。
「残り二週間を切っているのだから、急いで決めて欲しい」と頼んでも、「はいはい」と適当にあしらわれるだけ。俺達が一年ということもあって、舐められているのだろう。
「こんなに大変とは思わなかったわ……」
全部の部を回ったあと、生徒会に戻ってきた由姫はソファに体を預け、天井を仰いだ。
「あとは予算配分と設営場所の調整か」
「私が明日までにやっておくわ」
「明日までって、家でやるつもりか?」
もう時刻は十八時過ぎだ。下校時間も近い。
「明日でいいんじゃないか? まだ時間はあるだろ?」
「予算決定は早いことに越したことないわ。そのほうが準備時間を多く取れるでしょう」
由姫は鞄の中に資料を入れながら、ぽつりと呟いた。
「兄さんには勝つにはこれくらい頑張らないと駄目なんだから」
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