第18話 二人きりの放課後Ⅰ
生徒会の仕事の一つに、生徒会新聞の作成がある。
この学校の新聞は二種類あり、新聞部と生徒会が発行している。
新聞部の新聞は、スクープやエンタメに特化した娯楽雑誌という感じだ。
保管されていたバックナンバーを見ていると、教頭がヅラであることをすっぱ抜いた記事があった。やりたい放題過ぎる。これで良く発禁かからなかったな。
対して生徒会が発行するものは、これからの学校行事予定や、卒業生インタビューなど、真面目な内容が多い。
これを一か月に一度、作らなければならない。
「えっと、ここをこうして……よし。見栄えが良くなった」
俺はDTPソフトを使い、来月の生徒会新聞を作っていた。由姫が記事を書き、俺がPCで作成するという役割分断だ。
由姫の書いた記事はまぁ、面白みは無いが、誤字脱字の無く、読みやすい文章だった。ただ時折、難しい言葉を使いたがる傾向があったため、そこはちょちょいと修正しておいた。
「よし。これで完成っと」
プレビュー画面を確認後、俺はエンターキーを叩いた。
ソフトが古いせいで手間取ったが、学生レベルとは思えないものが出来上がった。
「うん。二人とも流石ね。初めてとは思えないわ」
プリントした生徒会新聞を会長に見せると、少し驚いたように目を丸くしていた。
そりゃ、元社会人ですから。資料作成はお手の物です。
会長はとんとんと資料をまとめると
「それじゃあ、私は帰るけど。鍵閉めお願いしていい?」
「あ、はい。私はもう少し仕事をやっていきますから」
「張り切るのはいいけど、ほどほどにね」
会長が帰り、俺と由姫の二人だけになる。
生徒会に来る頻度だが、副会長は来たり来なかったりの気分屋だ。
彼女の仕事は、揉め事の仲裁や生徒の悩みを聞いたりするもののため、暇な時は色んな部活に混ぜて貰って遊んでいるらしい。
菅田先輩は毎日来るが、必ず十七時には帰る。定時退社の鬼だ。
今日も仕事をさっさと終わらせて、いつの間にか消えていた。
一番長くいるのが生徒会長で、大抵は最後まで残っている。今日は珍しく仕事が早く終わったのか、俺達より先に帰ってしまった。
なので、生徒会室で由姫と二人きりになるのは初めてだ。
「貴方は帰らないの? 仕事はもうないでしょ」
「あー。まぁ、帰ってもやることないし。有栖川が終わるまで待つよ」
「別にいいのに」
由姫はそう言うも、それ以上は何も言ってこなかった。
彼女のキーボードを叩く音が、静かな生徒会室に響き渡る。
窓から夕陽が差し込み、由姫の銀色の髪に溶けて光る。その光景を、じっと眺めていた。
「ねぇ、ずっとこっち見てるのなんで? 気が散るんだけど」
俺の視線に気づいたのか、由姫が不機嫌そうな顔で言ってきた。
「いや、可愛いなと思って」
「かっ……」
ストレートに答えた俺に、由姫は一瞬顔を赤らめると、
「はいはい。そういうの、誰にでも言ってるんでしょ」
とあきれ顔で言った。
由姫の事を可愛い可愛いと無意識に言ってしまうのは、未来の俺の癖だ。
だって本当に可愛いんだもん。
「誰にもは言ってねぇよ」
「本当? 中学の時からそんな感じで女の子を口説いていたんじゃないの?」
「いや、中学の時は彼女はいなかったな」
「そう……。全敗だったのね……。ご愁傷様……」
急に由姫の目が優しくなった。
あれ? もしかして、ナンパしまくって全部フラれた可哀そうなやつだと思われてる?
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