第4話 入学式の朝
由姫と出会った日の夢を見た。
受験や面接など。大事な用事がある前日の夜、俺は必ずと言っていいほど、夢を見る。
夢を見るのは、眠りが浅い証拠だと、昔、TV番組か何かで言っていた気がする。
無意識のうちに緊張しているのかもしれない。
「ふぁ……」
目覚ましのアラームを止めた俺は、ゆっくりと体を起こした。
良い夢だったなぁ。久々に由姫と会えた。目を擦りながら、俺はカーテンを開き、朝の光を全身で浴びる。
このままもう一度寝て、夢の続きを見たい気分だったが、そうはいかない。
「さて、行くか。もう一度、由姫に会いに」
なぜなら今日は、二度目の入学式なのだから。
***
私立、七芒学園は全国屈指の進学校だ。
質の良い授業。生徒の自主性を尊重した校則。
他にも資格取得の際には補助金や、海外留学の支援金が出たりと、優秀な人にとっては天国のような学校だ。
俺の家からは自転車なら十分。徒歩なら二十分。
今日は時間に余裕があったので、徒歩で行くことにした。
学生の大半は、電車通学なので、駅から歩いてくるのが多い。学校に近づくにつれ、学生が多くなってきた。
今日は入学式なので上級生達は休み。全員が俺と同じ新入生だ。緊張している者。新たな生活に心弾ませている者、様々だった。
「それにしても、でかすぎんだろ……」
校門の前で俺は立ち止まり、これから通うことになる高校の大きさに息を飲んだ。
受験の際に一度、訪れているので二度目なのだが、受験の際は緊張でそれどころじゃなかったので、こうしてじっくり眺めるのは初めてだ。
「入学生の皆さん。会場はこちらでーす。こちらの列に並んでください」
眼鏡をかけた中年の用務員が、メガホンを手に、案内係をしている。
体育館の近くに行くと、入学生の列ができていた。
「俺、中学は奈良だったからさ」
「まじ? じゃあ高校から一人暮らし?」
先に並んでいる高校生達の会話を聞きながら、俺は列の最後尾に並んだ。
本当に俺、もう一度高校生をやれるんだな。
やばい。なんだか楽しくなってきた。こんなにわくわくするのは、いつぶりだろうか。
学生時代にやりたかったことは沢山ある。
せっかく二度目の高校生活を送れるんだ。やりたいことはなんでもやってやる。
「――と、その前にやりたくないことをやらないといけないんだった」
そう。俺は一つだけミスを犯してしまった。
「勉強やりすぎた……」
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