女の視点 私の何がいけなかったの?
最初は、なんであんなに尽くしてくれるのか、少し戸惑った。
彼は本当に優しくて、何でもしてくれた。私が風邪を引いたときだって、夜中にコンビニに栄養ドリンクを買いに行ってくれたこともある。誕生日にはサプライズでプレゼントを用意してくれて、あのときの私の驚きと喜びの顔は、彼も覚えているはずだ。
でも、そんなに尽くしてもらってるのに、なんでだろう。私はどこかでその優しさに甘えすぎている気がした。もちろん、彼がしてくれることには感謝している。だけど、私は彼に対して、同じくらいの気持ちを返せていないんじゃないかって、いつも心の片隅で感じてた。
彼と一緒にいると、安心できる。彼はいつも私の話を聞いてくれて、私が好きな映画や本のことだって調べてくれる。私が笑うと、彼も嬉しそうに笑ってくれる。そんな彼の優しさに、私は癒されていた。
でも、その優しさに甘えすぎてる自分がいることも感じていた。彼の優しさが、時々息苦しく感じることもあった。彼がしてくれることのすべてに感謝してるはずなのに、どこかでその気持ちに対して自分は十分に返せていないんじゃないか、そんな不安がつきまとっていた。彼が尽くしてくれるたびに、その思いは少しずつ強くなっていった。まるで、私が彼の優しさに依存しすぎてしまっているような気がして、私の心は満たされなかった。
そんなとき、彼じゃないあの人と出会った。彼とは違って、冷たくて、無愛想な人。最初は全然興味がなかったけど、あの人のことを好きになるなんて、最初は自分でも信じられなかった。彼は無愛想で、何を考えているのか全然わからない人だったから。優しくないわけじゃないんだけど、何か特別な言葉をくれるわけでもないし、私が話してもただ聞いているだけ。最初はただ『無愛想だな』って思うだけだったんだ。
でも、ある日ふと気づいたの。私がどんなにくだらない話をしても、あの人は黙って聞いてくれていることに。あの人がいると、不思議と安心できるんだ。まるで、自分がちゃんと見られている気がして。確かに、口では何も言わないけど、あの人の存在そのものが、私にとってはとても大きかった。
ある日、あの人が『お前が一番だ』って言ってくれたとき、その言葉が私の心に深く響いた。彼に言われても、たぶんこんなに嬉しくなかったと思う。なんでだろう。彼は私にたくさんのものを与えてくれたけど、あの人がくれたのは言葉ひとつ。なのに、私はそれで十分だって感じてしまったんだ。
彼には申し訳ないと思ってる。すごく良い人だし、私を大事にしてくれていた。でも、私はあの人を選んだんだ。それが私にとっての真実だった
「一番」って言われた瞬間、心が少し揺れた。私があの人の中で特別な存在だと思えるその言葉が、今まで感じたことのない安心感をもたらしてくれたから。でも、そのときは考えていなかった。あの人にとって「一番」が意味するものが何なのかなんて。
あのとき、あの人の「一番」って言葉に少し嬉しくなって、それを友達にも話した。友達も笑顔で「それは良かったね」って言ってくれた。でも、後から冷静になって考えると、違和感が出てきた。「一番」って、やっぱり他にもいるってことなのか?私、本当にその言葉に満足してるの? あの人が言ったその一言で、心が揺れ動いたけど、彼が本当に私を大事に思ってくれてるのか、わからなくなってきた。
その後、あの人とは何度か会ったけど、どこか私の気持ちは曖昧だった。あの人の冷たさや距離感が魅力的に感じたけど、ふと気づいた。私は安心感を求めているんだって。そして、その安心感を与えてくれるのは、やっぱりずっと側にいてくれた彼しかいないんだ。
だから、あの日、私は決心して彼の元に戻った。「あなたが一番だって気づいたの」と伝えたのは、本心だった。彼の優しさや思いやりが、私にとって本当に大切なものだと気づいたから。彼が私をずっと支えてくれて、私が悩んでいるときにも寄り添ってくれていたことを思い出した。
でも、私の言葉を聞いた彼の表情は、何かが違って見えた。以前と同じように安心させてくれる笑顔を期待していたのに、彼の瞳には少し迷いが見えた。彼の中で何かが変わってしまったんだろうか?私が彼を裏切ったことが、もう取り返しのつかないものになってしまったのかもしれない。
「……本当に?」彼が問い返したとき、その声に不安を感じた。
「うん、本当」私は必死にその気持ちを伝えた。だけど、彼の反応はいつもとは違った。いつもなら、すぐに笑顔になって、私を包み込んでくれるはずなのに、彼は迷いを見せていた。
その後、彼が何かを言おうとした瞬間、友達の何気ない一言が聞こえてきた。「……2番もいるぞ」
その言葉が、私の胸を刺した。彼もその言葉に気づいたみたいで、私たちはその場に立ち尽くしたままだった。
私は何を求めていたんだろう?彼の優しさに甘えすぎていたのかもしれない。そして、今になって、それがどれだけ大切なものだったかをようやく理解した。でも、もう遅いのかもしれない。
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