第6話 イクメン撲滅計画⁉️
私は36歳、仕事もそれなりに順調で、自由気ままに生きている。男には依存しない主義。だからと言って、彼が既婚者だからといってそこに何か特別な感情があったわけじゃない。ただ、彼は他の男とは少し違って見えた。いや、今考えれば勘違いだったかもしれないけど。
彼は自慢気に妻の話をしてくる。なんでも奥さんは看護師らしい。でも今は子育てのために専業主婦だとか。「看護師」という言葉を彼が言うたび、まるで彼自身が医者にでもなったかのような顔つきになるのが何とも言えなかった。いや、別に私は妻の職業に興味があるわけじゃない。それより気になったのは、彼が毎日仕事を終えて帰宅するたびに、子どもをお風呂に入れたり、家事を手伝ったりしているという話だ。
「仕事と家事の両立って、大変なんだよね」と、彼はしょっちゅう言う。私は、それを聞くたびに心の中でため息をつく。昭和育ちの私には理解できないのだ。
「え、あんた何やってんの?」と思わず聞いてしまった日があった。私には彼の言葉が信じられなかった。「なんで男が家事を手伝うの?だいたい専業主婦ってさ、家事育児が仕事じゃないの?なんで男が帰宅してまで手伝わないといけないわけ?」
彼は驚いた顔をしていた。私の言葉が彼の常識を揺るがせたのかもしれない。でも、その日はまだ序章に過ぎなかった。
次のデートで、ついに私は我慢できずに爆発してしまった。
「イクメンとかいう言葉、ほんと理解不能なんだけどさ、なんであんたたち男が定時で帰ってきて、わざわざ専業主婦の嫁の尻拭いしなきゃなんないの?ワンオペ育児とか聞くけど、そんなの女が一人でやって当然じゃん。男は外で稼いでくればいいだけでしょ?」
私は熱弁を振るった。彼は黙って聞いていた。いや、むしろ言葉に詰まっていたという方が正しいかもしれない。私は続けた。
「さ、ハッキリ言えばいいのよ。俺は家事やりたくない、って。そもそも専業主婦なんだからさ、自分の仕事は自分でやれって言ってやればいいのに!」
彼は言葉を飲み込んだようだった。どこか居心地の悪そうな顔をして、笑顔も消えていた。
その日を境に、彼の態度は急変した。「風邪をひいた」とか、「仕事が忙しい」とか、理由をつけては私と会う時間を避けるようになった。まあ、別に私は彼の妻でもないし、そんなに会いたいとも思っていなかったけど、連絡の途絶え方があまりにも露骨だった。2ヶ月も経つと、さすがに何かおかしいと思わざるを得なかった。
私はついに問いただした。「ねえ、もしかして私、遠回しに振られたってこと?」
彼は電話の向こうで深いため息をついた。
「ごめん、なんかそういう感じになってしまってるけど、そういう訳じゃないんだ。ただ…うまく言えないんだけど、ちょっと考える時間が欲しい。」
考える時間?まさか、彼が悩んでるのは私との関係じゃなく、家庭内の「イクメン」としての役割のこと?思わず笑ってしまいそうになったが、ここはぐっとこらえた。
それから彼とは連絡が途絶えた。彼は、あの時私が言った「男はガッツリ稼げばいい」という言葉が頭から離れなかったのかもしれない。もしかすると、彼は自分が築き上げた「イクメン」の虚像が崩れた瞬間に、現実を見てしまったのだろう。
それでも、私は思う。男って、やっぱり単純だ。家事や育児で疲れた顔をしているけど、結局のところ自分を守りたいだけなんだ。「イクメン」を名乗るのも、社会に良い顔をしたいだけだし、家で妻に怒られたくないからだ。そんな理由で、私たちシングル女性が彼らの尻拭いをさせられてるなんて、馬鹿げてる。
さよなら、イクメン。私はこれからも、舌打ちしながら、独りで自由に生きていくのだ。
次回、私が次に出会うのはどんな男か――きっと、もっと面白い奴が現れるはずだ。
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