第2話 32歳 体育会系エリート商社マンの場合
32歳、元野球部で筋肉質、スーツ姿がビシッと決まる商社のエリート男。まさに絵に描いたような「ハイスペック男子」。彼は「結婚したい」と言っていたけど、43歳の私、バツイチで年上。正直、彼が私を選ぶとは思えない。でも、だからこそ燃える。この手で、彼を絶対に手に入れてやると決意した。
まずは計画通り、彼の心を掴むための「匂わせ戦略」。マッチングアプリでのやり取りは順調そのもの。彼が私に「年上の女性が好みだ」と告げた時、思わずニヤリとした。これは勝負に出るタイミング。彼はその気にさえさせれば簡単に私に落ちる。あとは、一歩踏み出すだけだった。
初デートの日。待ち合わせ場所は、夜景の見えるオシャレな居酒屋。彼は自然体でリードし、当たり前のように全て奢ってくれた。その気配りに感心しつつ、私の心はさらに高ぶっていた。お酒が進むにつれ、彼との距離はぐっと縮まっていく。そして、二次会に誘われたとき、私の胸の高鳴りは止まらなかった。
「じゃあ、この後どうする?」彼が問いかける。その瞬間、私は冷静さを保ちながら、微笑みを浮かべた。「ホテル行く?」軽く口に出したその言葉に、彼は目を瞬かせてから、にやりと笑った。すべては計画通り。ホテルのドアが閉まる音が、私たちの新しい関係の始まりを告げた。
ベッドの中、彼は無邪気な笑顔を浮かべながら私に言った。「ねえ、君って、本当に大胆だね。」私はすかさず、「ねえ、私のセフレにならない?」と言ってみた。彼の表情が一瞬、驚きに変わり、次の瞬間には笑顔で「いいね」と返してくれた。その瞬間、勝利を確信した。
それからというもの、何度か逢瀬を重ねた。ホテルで会って、ホテルで別れる。いつも同じパターン。食事も、会話も、体もすべて完璧。でも、ふと気づいたのは、私たちのデートは三時間で終わるという事実。おしゃれな店でのディナーも、熱い夜も、すべてが予定通りに進む。でも、心の奥に少しずつ溜まる違和感を無視できなくなっていた。
バレンタインデーには、少しだけ特別なことをしようと思った。彼にチョコレートをプレゼントすると、彼は本当に嬉しそうに喜んでくれた。律儀な彼はホワイトデーにしっかりお返しもしてくれて、その一瞬は「本当に私たち、上手くいくのかも」と思った。
しかし、運命はそれほど甘くはなかった。彼が突然、東京に転勤になった。半年間は忙しくて会えなかったけど、ついに彼に会うために東京へ向かった。だけど、彼の反応は今までとは違っていた。以前のように温かく迎えてくれたはずなのに、どこかよそよそしさが感じられた。
その後、連絡は少しずつ途絶え、ついには彼のLINEがブロックされた。心に穴が開いたようだった。「結婚したい」と一言も言ってないのに、どうして彼は私をこんなにも簡単に切り捨てたのか、理解できなかった。
43歳の中年女性として経験する失恋は、若い頃のそれとは比べ物にならないほど重く、深く胸に突き刺さった。それでも、私は自分の感情を飲み込み、また前に進もうと決意した。人生はドラマ、そしてその脚本は自分で書くしかないのだ。
--
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます