第5話 警備員さんはホストじゃないって言ったけど…
私は何度も「ホストはもう懲り懲り」と誓ったはずだったのに、またもやイケメンに惹かれてしまう自分が情けない。マッチングアプリの画面に現れた彼、加工されすぎて二次元級の美形だ。でも、そのやりとりには嫌な感じはなく、スムーズに進んでいく。けれども、私は過去の経験から用心深くなっていた。
「ホストじゃないよね?」と何度もストレートに聞く私に、彼はしっかりと「違う」と答える。「ビルの警備員をしているんだ」とのこと。なんか腑に落ちない。「副業でホストやってない?」と畳み掛けるように問いただすも、彼は嫌な顔ひとつせず、「ガチの警備員だよ」と笑顔で返してくる。
「こんなイケメンが深夜に制服姿で歩いていたら、襲われてもおかしくないな…」と思いつつ、私は待ち合わせ場所へ向かった。
そして、ついに現れた彼は…うん、実物は3次元。二次元級ではないけれど、背が高くて清潔感もあり、好印象。特に嫌な雰囲気もない。まぁ、写真の加工は誰にでもあることだし、今は男子も盛るんだな、と妙に納得。
会話は和やかで、彼が話してくれたエピソードがとても印象的だった。彼は以前にも私くらいの年齢の女性とマッチングしたことがあり、二回ほどデートを重ねたという。しかししばらく会えない日々が続いた後、彼の自宅に封書が届いたらしい。中を開けると、彼への気持ちを綴った美しい手書きのラブレターと、片側だけが記入された婚姻届が同封されていたという…。
「安心して、私はそんなことしないから」と冗談を交わしながら、その夜は軽く食事をして解散。別れ際、彼からの連絡が途絶えた。まぁ、ヤリモクってやつだったのかもしれない。
それから半年後、またアプリで彼から「いいね」が来た。彼が私だと気づいていない様子だったので、思い切って名乗ってみた。「あ、ゴメンなさい」と彼は一言だけ言って、再び去っていった。
そんな日々が続くけれど、私は今日もイケメンに弱い。人生って、そんなもんよね。
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