第4話 IT社長編
「私はベタベタした関係が嫌いでね、サクッとエッチして楽しくお話できる人がいいの。」
これが美咲のいつもの常套手段。大抵の男はこれで落ちる。会って、セックスして、楽しくおしゃべり。そして自然と、ほぼ毎日のようにLINEのやり取りが始まる。まるで付き合っているみたいに感じてしまうこともある。
彼もその一人だった。ただ、他の男たちとは少し違う。彼はIT企業の社長で、常に忙しかった。システムを自ら開発するエンジニアでもある彼は、商談やプロジェクトが始まると、連絡が途絶えるのは当たり前。美咲も、それが仕方のないことだと理解していた。
「久しぶりに暇ができたんだ、会おうよ。」
そんな一言に心が躍る。彼から誘われるたびに、心のどこかで待ち焦がれていた自分を感じる。だけど、本当のところ、美咲は彼と“付き合っている”という確かな感覚が欲しかったのだ。
彼との関係はただの遊びではなかった。美咲もインテリアデザイナーとして働いており、パソコンを使うことが多い。分からないことがあると、彼は親切に何でも教えてくれた。彼は単なる恋愛相手ではなく、仕事のパートナーとしてもとても頼りになる存在だった。
年齢も、状況も、申し分なかった。彼は美咲より一つ年下で、バツイチ同士。お互いに子供もいない。そう、まるで運命のような相手に思えた。
テレビを見れば、IT社長と結婚する美しい女性芸能人たちがいる。そんな成功した女性たちを見て、美咲は思った。**IT社長との結婚こそ、女の花道**だと。美咲も仕事でそこそこ成功しているキャリアウーマン。彼さえ手に入れば、人生のパズルが完成するのに。
「彼氏、パートナー、そして旦那になる男さえいれば、私の人生は完璧になる。」
そう考えた美咲は、決心した。彼を手に入れるために動くことを。そこで、彼を高級焼肉店に誘い、思い切って関係を進めるつもりだった。
しかし、約束の日、彼は来なかった。待っても待っても、連絡すらない。
「何なのよ、バカにしてるの?」
悔しさと苛立ちが込み上げ、美咲は彼のLINEをブロックした。それから半年間、彼のことは忘れようと努めた。
そんなある日、マッチングアプリで見覚えのある名前が美咲に「いいね」をしてきた。
「てめー、ふざけんじゃないわよ…」
抜け抜けと、「またエッチしようよ」とメッセージを送ってくる彼に、美咲は呆れ返った。恋愛指南書には、**本当に手に入れたい男とは簡単にセックスしてはいけない**と書いてあったのに、また同じ過ちを繰り返してしまった。
「あぁ、またやってしまった…」
美咲は爪を噛みながら、今度こそ違うアプローチをすることを心に決めた。しかし、IT社長との曖昧な関係はまだ終わりそうにない。
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