第79話

アタシがエスカレーターから下りてくるのをリオはビックリしたような表情で見ていた。


「こら、なにヒトの会社うろついてるの。いくら娘でも関係者以外は立ち入り禁止なのに部長に注意しておかないと。」


あ、それはマズイ。

罪のないお父さんが可哀想。


「む、無理矢理アタシがお願いしたの。それよりスッゴイカッコイイ人見つけちゃった。」


そう言ったアタシにリオは呆れたように笑う。



「……なに、ソイツと結婚でもしたくなったの?」


「まさか!妬いてるの?」


からかうようにアタシはリオの顔を覗き込む。



「妬いてんの!」


そう言って彼はアタシの唇に一瞬触れた。



「こ、ここ会社だよ!?」



「可愛い事言っちゃう沙良が悪いんでしょ?」



うわ……バカップルみたい。

だけど、にやけてしまう。


アタシは赤くなっているであろう自分の頬に触れる。何気に腕時計の針が視界に入る。


「あ!」



「なに、大きな声あげないでよ。」


アタシの前を歩いていた彼が振り向く。



「ごめん、リオ。」



「だから、なに?」



「休憩終わっちゃった……帰るね?」



         END

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