第35話

「うちの社員とマジで付き合ってるんじゃないの?」



そう言うとキーを打っていた滝川の指が一瞬止まる。でもそれは直ぐに何事もなかったように打ち始める。



ビンゴ。


でも意外だった。


滝川は他人に自分を見せないけれど、


今、一瞬だけ彼の心を初めて覗いたような気がした。



「……その噂どこから?」



「は?あ……噂というか、」


俺が言い難そうに口ごもると滝川は身体を俺の方に向ける。

彼の雰囲気から冷たいものが流れ出ているように感じた。


怖い。

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