第4話・名家のお嬢様ってキャラ崩壊が伝統なの?
新入生の次席・炎城由香。
彼女の姿は中等部では見たことがないのでおそらく姉妹校出身かな?
自分の記憶を洗っていると、炎城さんの後ろにいる取り巻き二人が頬を赤く染めながら口を開いた。
「あの方が噂の神阪様」
「見てるだけで浄化されそうですわ!」
やっぱり晴人は女子にモテるな。
このまましれっと離れて空気になりたいけど、相方を置いていくのは出来ないのでビビりながらも足を止める。
「な、なあ、裕太。コレからどうなるんだ?」
「僕に聞くよりも彼女達に聞いたらどう」
「ちょっ!? 本人がいる前でいうセリフ?」
「いやだって、絡まれる理由が思い浮かばないんだよ」
「なっ、わたしに屈辱を与えたくせに……」
ドユコト?
ブルブルと怒りに震えているみたいで、次席様は悔しそうにコチラへ指さしてくる。
その時に取り巻きの女子二人は頭痛がするのか額に手を置き、呆れたようにため息を吐いた。
「ここで問題を起こすのは得策ではないかと」
「ちょっ、アンタはどっちの味方なのよ!」
「自分達は由香様の味方です」
「なるほどなるほど……。って、機械的に言われるのは悲しいんだけど!?」
何をしにきたんだろう?
ギルドのロビーでギャアギャアと内輪揉めしている女子生徒三人。
この状況で神経を削っていると、笛を持った警備員さん達が近づいてきた。
「おいそこ! ギルド内での揉め事は厳禁だぞ!」
「いやあの、僕も相棒は立っていただけですよ」
「それは見ているから大丈夫だ!」
「よかったです」
コチラへの文句ではなさそう。
警察官が着るような紺色のスーツを着た男性警備員さんの一言を聞き、ホッとしているとギラギラとした目をした炎城さんが強い言葉を吐く。
「ちょっ!? その言い方だとわたし達が迷惑みたいじゃない!」
「みたいじゃなくてその物だ!」
「ぐっ! なら、
「「「「「え?」」」」」
やばい吐きそう。
危険探知のセンサーがマックスレベルに立つ中、自慢げな表情をした炎城さんが頬を吊り上げた。
「炎城家の名前をかけて決闘よ!」
「いや、そんなのいらない」
「ふふっ、もしかしておじけ……え? いらないってなによ!」
バッサリと切ったなー。
晴人が綺麗なカウンターを放ち、自分のプライドをかてそうな炎城さんの目が点になった。
彼女の一歩後ろにいる取り巻き達は唖然としているのか、金魚の口みたいにパカパカしている。
「オレには神阪というかっこいい名前でいいのに二つ目なんているか!」
「いや、たぶんだけど炎城さんは晴人と付き合いたいんじゃない?」
「おいおい、裕太にしては面白い冗談だな」
「僕もそう思ったよ」
しっかし炎城さんの表情がコロコロ変わるのは面白い。
さっきまで顔を真っ赤にしていたのに、今度は目をキラキラとさせている炎城さん。入学式初日で人が少ないギルドのロビーだけど、少数の生徒達がコチラをチラチラと見ている。
この状況は面白く感じるが、警備員さんが呆れたようにため息を吐く。
「そうゆう甘酸っぱい物はここよりも校舎裏の方がいいぞ」
「あ、オレはほぼ初対面のこいつらに興味がないのでどうでもいいです」
「どすとれーと!?」
「なっ!? あ、あなたどこまでわたしに屈辱を与えるの!」
「「由香様!?」」
わあぁ、ついにブチギレたっぽい。
ぶっちゃけ余裕があるのは晴人がいるおかげで、一人だったら速攻で逃げる相手。
というかダンジョンや訓練でもないのに
「おいおい、それを抜いたら冗談じゃすまないぞ」
「そんなのウチがもみ消すわ!」
「増援を求む!」
少しずつ下がろう。
武器を抜いた炎城さんと止めようとする取り巻き。
男性警備員さんが増援を呼び、周りにいる人達の視線はコチラに釘付けになっている。
「どうしてこうなったんだ?」
「きっと僕達にはわからない女心があるんだよ!」
「それって面倒なやつじゃん」
「だ、れ、が! 面倒で重いヒステリック女よ!!」
「「そこまで言ってない!?」」
あのー、警備員さん早く取り押さえてください。
ガチで切りかかってきそうな炎城さんだが、屈強な女性警備員さんに組み敷かれた。そのおかげでいちおう助かったけど、向こうは鋭い瞳でコチラを睨みつけてくる。
「この卑怯者!!」
「えっと? 卑怯者って言われても僕達は何もしてないよ」
「こ、コイツら、どこまでわたしを惨めにさせるの!」
「と、とりあえず状況の確認をしますね」
「「「「あ、はい」」」」
担当の警備員さんの確認も聞き取りの結果。
僕達と取り巻きの二人は軽い注意だけで終わり、禁止事項の武器を引き抜いた次席の炎城さんは三日の退学と反省文になった。
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ロビーで次席達に絡まれて酷い目にあった後。
すでに番号が呼ばれていたらしく、聞き取りが終わったのね早足で買取&鑑定部門に向かう。
「お待たせしてすみません」
「上から理由は聞いているので大丈夫ですよー」
「それはよかったです」
とりあえず問題がなくてよかった。
「私も少しだけしかお聞きしてませんがお疲れ様です」
「ま、まあ。それよりも買取はどうなりましたか?」
「買取額ならコチラになりますね」
「手取りで六万円超えならだいぶ儲かってないか?」
スケルトンの魔石が二百個ちょいで合計六万円と少し。
コレだけあればだいぶ儲かっているように見えるけど、あくまで手取りなのでここから色々引かれてしまう。
「あくまで
「あ……。となると、中等部の時と同じパターン!」
「ええ、ここから保険や税金などを引いて手取りは三万円ちょっとになりますね」
「毎回思うけど引かれるのが多すぎるだろ!?」
「それは僕も思うよ」
マジで天引きが酷すぎる。
税金や保険もそうだけど武器のレンタル費用や、ダンジョン入場費。この辺も含まれているとはいえ、それでもだいぶ高い気がする。
心の中で文句を言っていると、担当のお姉さんこと竹田さんが申し訳なさそうに言葉を続ける。
「お二人の嘆きは理解できますが規則は規則なので……」
「ま、まあ、そこは理解しているつもりだから気にしないでくれ」
「はい! あ、後は短剣の鑑定費用で一万円かかるので残りが二万四千円になります」
と、なると山分けすると一万二千円になるのか。
ぶっちゃけ晴人の方が働いているので山分けでいいかは毎回気になるが、本人からの意見なので問題はないっぽい。
どこか申し訳なくなるけど、気にするのもアレなので竹田さんからお金を受け取る。
「コレで
「そうだね! って、あんまり頼みすぎないでよ」
「ははっ、それは店に行った時のオレに聞いてくれ」
「ですよねー」
ほんとコイツは絵になるな。
キラキラとした笑みを浮かべる晴人と共に竹田さんに一礼した後、夜ご飯を食べに行くためにギルドの建物から出ていくのだった。
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