第3話・疲れているのになんでコイツ〈次席〉と出会うんだよ……
葉隠学園高等部にあるダンジョン・
クソダサい名前だけどダンジョン自体の難易度はそこまで高くない場所で、経験の浅い生徒にはちょうどいい場所らしい。
「なんで浅瀬にモンスターハウスがあるんだ?」
「僕に言われてもわからないよ」
「確かにコレばっかりは専門家案件だよな」
第二層のモンスターハウス。
事前情報であるのは知っていたし、晴人の要望で凸ったけど出てきたのはスケルトンのみ。
ぶっちゃけ晴人の敵じゃないので本人一人で無双してしまい、僕は部屋の外で棒立ち&銀鎖で防御していただけで終了してしまった。
というか、僕なら吐きそうな状況なのに晴人はよく突っ込めるな。
「その専門家案件を簡単に処理する晴人はなんなのさ?」
「さあな? まあでも、こんだけ魔石があれば美味いもんが食えるだろ」
「はいはい」
ただこの数を二人で拾うのは少しきつい。
百個以上ある魔石を拾い終わった後、部屋の奥にある宝箱の鍵垢をしていく。
「やっぱりこのタイミングが楽しみだな」
「ソシャゲのガチャみたいな感覚だしね」
「そうそう!」
出来ればレアを引きたいが二層だと期待できないんだよな。
ガチャリと鈍い音がしたので宝箱を開けると、中には鞘に入った短剣が入っていた。
「「……え?」」
見た感じ魔装っぽいけど浅瀬で出てくる物なのかな。
短剣の中央に埋め込まれている石は青色で短剣自体はシンプルな物。
当たりの可能性があるので顔を上げると、めちゃくちゃいい笑みを浮かべた晴人が僕の肩を勢いよく掴んだ。
「もしかしてもしかしてがあるぞ!」
「いや気持ちはわかるけど落ち着こう!?」
「あ、すまん」
びっくりしたー。
苦笑いで肩から手を離してくれる晴人に突っ込んだ後、手に入れた探検を背中に背負ったカバンに放り込む。
「後でギルドに鑑定してもらわないとね」
「だなー。って、裕太はココのギルドに行ったことはあるのか?」
「いやない!」
「ちょっ、自信満々にいうセリフじゃねー!?」
いやだって
真面目な回答をしていると晴人が呆れてたので、満面な笑みで言葉を返す。
「そもそも入学式当日にダンジョンに潜る僕達はおかしいよね」
「それはそうだが好奇心は抑えられないだろ!」
「確かに!」
やべぇ、綺麗に論破されてしまった。
しかも超イケメンの晴人だから絵になるし、ぶっちゃけコイツをアイドル事務所に放り込んだほうがいい気がしてきた。
気持ちよさと呆れが混ざる中、少し不安になりながら立ち上がる。
「さてと、移動しようか」
「ん、おう!」
これ以上モンスターハウスにいる必要はない。
そう思いながら僕達はスキップしながら部屋から離れていく。
「しっかし、これだけあれば夜飯は贅沢にできそうだな」
「だねー。って、高級店は無理じゃね?」
「そもそも高校生のオレ達じゃ入れないだろ」
「まあね」
それはそう。
晴人の言葉に頷きながら部屋に出た後、改めて警戒しながら洞窟の奥に進む。
ーー
入学初日なので攻略は三層にして早めに地上に帰還。
その足で葉隠学園内にあるギルドと呼ばれる総合施設の建物に入ると、中は市役所みたいに部署が別れていた。
「なんか中等部の時よりも建物がしっかりしてないか?」
「そりゃコッチは新築みたいだよ」
「へぇー」
ギルドの建物は鉄筋コンクリート製で多少暴れても問題ない耐久性がある。
……そもそも暴れることが前提なのが恐ろしいが、冒険者達は血の気が多いんだよな。
「っと、買取&鑑定部門は右らしいよ」
「了解。って、相変わらず場所の特定が早いな」
「いやだって、ソコに案内図があるからね」
「おおう……」
目の前にある案内図。
地味にショックを受けているのか晴人の額から冷や汗が流れているが、固まったままだとアレなので腕を掴んで引っ張っていく。
「微妙に悲しいのはオレだけか?」
「さ、さあ? それよりも買取部門にいくよ」
「ははっ、了解」
自分の足で歩いてくれない?
色んな意味で突っ込んでいると買取部門に到着したので、晴人の腕を話した後に受付のお姉さんに声をかける。
「すみません」
「はーい、もしかして買取ですか?」
「ええ、後はレアを引き当てたので鑑定もお願いします」
「あ、わかりました」
やっぱり初手からレアは驚かれるのか。
受付のお姉さんに順番表を受け取り、晴人と共に席に座ってまつ。
「しっかしここのお姉さん達は綺麗な人が多いな」
「あー、確かにそうだけど性格がわからないよ」
「……だよな」
「なんかごめん」
やべぇ、心がえぐれてしまった。
互いに過去のトラウマを思い出していると、コチラの番号が呼ばれたので担当のカウンターに向かう。
「初めまして担当の竹田です。お二人のネクタイを見る限り新入生で大丈夫ですか?」
「ええ、そうです」
「なるほど……。では簡単に買取&鑑定部門の説明をしますね」
「「よろしくお願いします」」
説明は中等部時代でも聞いたけどズレがないかの確認は必要かな。
カウンターの椅子に座った僕たちは反対の席に座る二十代後半のお姉さん・竹田さんから買取&鑑定部門の説明を聞いていく。
「まずダンジョンから取れた魔石やアイテムは基本的に売却になるのは知られてますか?」
「「はい」」
「なるほど……。ではレア物が出た時の対処も知られてそうですね」
「いちおう、受け取るか売却の二択でしたか?」
「そうです!」
魔石は基本的に売却になりレア物は受け取るか売却。
ここは中等部と同じっぽいので安心しながら竹田さんの話を聞き続ける。
「大まかはこんな感じなので売却品を提出していただけますか?」
「了解です」
「……え」
テーブルのトレイには今日取れた魔石が二百ほど。
プラスでモンスターハウスの宝箱から入手した短剣は隣におくが、竹田さんは目を点にしながら顔を上げた。
「何かありましたか?」
「い、いえ、大丈夫です!」
この感じはやっぱり慣れないな……。
微妙に焦る竹田さんに申し訳なくなりつつ、僕と晴人は互いに顔を見合わせる。
「では僕達はロビーで待ってますね」
「は、はい!」
こういう時はさっさと離れるのが一番。
新しい番号表を受け取った後、僕達は立ち上がり一礼してから買取&鑑定部門から離れる。
「しっかしあの程度の量で驚かれるとはな」
「まあ、入学初日だから驚いたんだよ」
「あー……」
少なくも初っ端から持ってくる量ではないはず。
その事を晴人に伝えると理解はしたのか、呆れた表情で微笑んだ。
「そんなわけで、ッまずい」
「
「うん、しかも今回は避けにくいタイプだね」
「おいおい、マジかよ!?」
避けれないのは直感的にきついところ。
ビクビクする感覚を感じながらロビーに移動すると、そこには取り巻きをつれた赤髪の少女が不機嫌そうに周りを睨みつけていた。
「やっと見つけたわ主席さん」
「「……ああ」」
個人的に出会いたくなかった相手・炎城由香。
獰猛な笑みを浮かべる彼女や見下す視線をコチラに向けてくる取り巻き。
これから起こりうる面倒事に僕は思わず頭を抱えたくなるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます