第3話 腕なしの底に

 痛みも感覚も、無かった。ただそこにあった筈の空気感が感じられないだけ。


 泣きたいとか叫びたいとか、それとはまた一味違うある種の意志が、生まれようとしている。


「え、あ、お」何が言いたいのだろうか?僕自身も分からない声が出た。僕は地面に横たわっていたのか、身動きがうまく取れなかった。


 満天の星空の下、僕は寝そべっていた。起き上がることもできず、ただ時間の進む様に任せた。美しいのか、醜いのか、今はそんな事どうでもよい気がした。


 足が少しだけ動いた。そのおかげで、近くにあった壁にもたれかかる事ができた。ほとんど生きていないような僕は、底で息をした。何度も何度も息を繰り返す度に、生きていることをどうしようもなく理解した。


「みずが」何か飲みたかった。何でもいいいから口の渇きが癒えるものを。頭を少し回し、辺りを探す。そこには別に何もなくて、渇きは癒えそうに無い。何もないことを理解するのに数秒を要した。後から付け足されたような感情は、泡となって消えていく。


 

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